「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に対する意見募集について

「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に対する意見募集について

2023年12月20日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年6月29日
  • タイトル:「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に対する意見募集について
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

モバイル・エコシステムの透明性や公平性を損なう懸念

2023年6月19日から8月18日にかけて行われた「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に対する意見募集。その最終報告書(概要)の内容をランチタイムトークのお題に取り上げました。

今日、スマートフォンという顧客接点を介して、多くのユーザーと多くの商品・サービス提供事業者をつなぐ強固なエコシステム(モバイル・エコシステム)が形成されています。それを構成するレイヤー(モバイルOS、アプリストアやブラウザなど)はアップルとグーグルの寡占状態が続いています。

「モバイル・エコシステムに関する競争評価」は、内閣官房デジタル市場競争会議およびデジタル市場競争会議ワーキンググループで進められ、2022年4月に中間報告が発表されました。その後、世界各国でもさまざまな動きがありました。たとえば、欧州では、特定の事業者による自社優遇や抱き合わせ販売、データ活用関連の禁止行為リストを含む事前規制を規定したDMA(Digital Markets Act)が2023年5月に施行されています。こうした世界的な状況を踏まえつつ、2023年6月16日に本最終報告がまとめられました。

本最終報告では、モバイル・エコシステムにおける競争上の懸念に対応し、透明性や公正性を向上させるために2つの方向性が提示されています。

1つが「共同規制」。政府が規律の大枠を定めながら、事業者の自主的な取り組みを尊重する規制枠組みです。もうひとつが「事前規制」。一定の行為類型の禁止や義務付けを行う規制枠組みです。

サイドローディングは認められる?

iPhoneにおけるApp Store以外のアプリ代替流通経路の検討にあたっては、事前規制における一定の行為類型としては、次の4つが挙げられています(あくまで想定で、「これら以外の類型が排除される訳ではない」ことが記されています)。

  1. Appleによる審査が前提となるApp Storeを通じてダウンロードされる代替アプリストアを通じたアプリ配布
  2. iPhoneにプリインストールされた代替アプリストアを通じたアプリ配布
  3. ブラウザを使ってダウンロードされる代替アプリストアを通じたアプリ配布
  4. いかなるアプリストアも経由せずブラウザを経由してアプリ自体をダウンロードする方法によるアプリ配布

「4(場合によって3)は、サイドローディングといわれるものです。App StoreやGoogle Play ストアという大手プラットフォーマーのアプリストア以外、つまりサードパーティーのアプリストアからのアプリの購入を認めることを意味します。ただし、その場合、セキュリティ上の懸念が指摘されています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)。

注目される日本における法制度の方針

さて、本最終報告および、それに対するパブコメの結果、また連携する諸外国の動向を受けて、日本での法制度の検討が進められる見通しです。果たして、サイドローディングの可否や、決済・課金システムの利用について、どこまで踏み込んだ内容になるのでしょうか。

「サイドローディングについて最終報告では、前述の類型①②③が提言されています。ただ、実際に法制度にどこまで反映されるのかについては議論がありそうです」(太田)

2006年に設立された、技術関連の公共政策推進を目的とする非営利団体Information Technology and Innovation Foundation(ITIF)は公式サイトの記事で、DMAは、アップルの閉じたモバイル・エコシステムと、サイドローディング可能なオープンなモバイル・エコシステムの、2つのプラットフォームを競わせることで消費者の選択肢を増やし、プライバシーやセキュリティに配慮しつつ、イノベーションを生み出すことが可能だ、という趣旨の意見を述べています。

さて日本の法制度では、どのような方針になるのでしょうか。今後も注目したいと思います。

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