日経新聞1面記事解説(電気通信事業法改正)

日経新聞1面記事解説(電気通信事業法改正)

2022年4月8日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年12月2日
  • タイトル: 日経新聞1面記事解説(電気通信事業法改正)
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

プライバシー保護に向けて電気通信事業法の改正が視野に

2021年11月30日、日本経済新聞電子版イブニングスクープに「ネット履歴の外部提供に「拒否権」 利用者保護へ総務省」という見出しの記事が掲載されました(朝刊は翌12月1日付)。こちらの記事の内容にデータサイン 代表取締役社長 太田祐一がコメントしました。

記事では総務省がターゲティング広告などにおける、広告会社含む事業者へのユーザーのデータ提供に関して国際水準に近いルール整備に着手することが報じられています。電気通信事業法や指針などの改正を視野に2021年12月から具体策の検討に入ると記されています。ユーザーのデータを自社内のサービス向上に活用する場合は対象外ですが、広告目的などでは事後にデータ提供を拒否できるオプトアウトの仕組みをサイト内に設けることを義務付けるなど、プライバシーにより配慮した対応が求められそうです。

「2021年5月20日のランチタイムトークで取り上げたデジタル市場競争会議の最終報告でも電気通信事業法および関連するガイドラインでの課題対応に関する言及がありました。また2021年9月公表の総務省 プラットフォームサービス研究会の中間とりまとめでも、利用者端末上のCookieやIDFA(アップルが付与する広告識別子)などの情報は通信関連プライバシーとしてほぼすべて電気通信事業法で対応する趣旨の記載があります。総務省の電気通信事業ガバナンス検討会でも同様の議論があります」(太田)

「ウチの会社は電気通信事業を営んでいない」から大丈夫?

とはいえ電気通信事業法と聞いても多くの企業が『ウチはNTTのような電気通信事業者じゃないし、関係ない話だ』と思いがちではないでしょうか?

しかし、太田が参加する総務省の「プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ(第8回)」における意見交換(電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン改正(案))では、自社ウェブサイトやアプリの運営をしている企業の一部も規制の対象に含まれることが示唆されました。

総務省が2019年10月1日に最終改定した電気通信事業参入マニュアル[追補版]には、「電気通信事業法第164条第1項第3号事業を営む者(しゃ)」に関する説明があります。

第3号事業を営む者には、電気通信事業の登録または届出に係る規定などは適用されないものの、事業法の第3条に規定する「検閲の禁止」および第4条に規定する「通信の秘密の保護」が通信に適用されます。

「関係者の話を総合すると、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業者および第3号事業を営む者に規制が課せられるのではないかと思われます。その中に一部のウェブサイトやアプリを運営する企業が含まれる見通しです」(太田)

ユーザーに配慮したオプトアウトの実装に追い風?

もし電気通信事業法の法改正によりウェブサイトやアプリを運営する企業の一部が対象となるならば、そうした企業はどのようにして同意を取得する必要があるのでしょうか?

「あくまで私見ですが、どのような情報を何の目的で取得しているのか、についてユーザーが確認できるようにし、必要に応じて事前同意を得ましょう、という方向に進むと予想されます。たとえばユーザーがあるウェブサイトにアクセスしたとします。その情報がユーザーの端末(ブラウザなど)で実行されたJavaScriptタグの指示を介して第三者のサーバーに送信される場合、ウェブサイト側でユーザーの同意を取ることになると考えられます。ただし、事前に同意を取るだけでなく、事後でも同意を撤回できるようにオプトアウトの仕組みを設置することが必須になりそうです」(太田)

過去の日本経済新聞の調査結果から明らかになったように、日本ではオプトアウトを可能にしているサイトはあまりないのが現状です。ユーザーから取得する情報とは何か、何のために用いるものなのか、またオプトアウトの方法はどうあるべきか、など踏み込んだ検討は今後の法改正に向けた公の場での審議などを通じて深められることが期待されます。皆さんも今後の動きをぜひチェックしてみてください。

お詫び:この日のランチタイムトークで「法改正により電気通信事業者にウェブサイトやアプリを運営するすべて企業が含まれる見通し」という趣旨の発言がありましたが正しくは「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業者および第3号事業を営む者に、ウェブサイトやアプリを運営する企業の一部が含まれる見通し」でした。訂正をいたします。

お問合せ