電気通信事業法改正 続・続報

電気通信事業法改正 続・続報

2022年4月12日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2022年1月13日
  • タイトル:電気通信事業法改正 続・続報
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

法改正に向けた動きの経緯とは?

ランチタイムトークでたびたび取り上げているのが、国の電気通信事業法改正に向けた動きに関する話題です。規制強化だと見直しを求める立場の業界団体。一方、改正を支持する消費者または個人の権利保護を掲げる団体などの主張や論点をデータサイン 代表取締役社長 太田祐一が解説しました。

電気通信事業法の改正検討のきっかけの1つになったのが、2021年9月15日に公表された総務省 プラットフォームサービス研究会の中間とりまとめです。

中間取りまとめには、

改正個人情報保護法の施行に向けて、電気通信事業 GLについて全面的に見直す必要がある。電気通信事業 GL は電気通信事業を営む事業者が利用者情報に係る通信の秘密や個人情報・プライバシー上の適正な取扱いを行う観点から一元的に参照することができる文書としてとりまとめていくことが望ましい。

という一文があります(文中のGLはガイドラインの略です)。

「Cookieなど利用者の識別に用いられる情報や、ウェブサイトで何を見たか、というような通信サービス上の行動履歴は、個人情報保護法における個人情報には該当しません。しかし、今日において個人のプライバシーに関わるパーソナルデータであると諸外国では見られています。一方、電気通信事業法では信書、電話、メールなどの通信の秘密を保護が定められています。法改正の方向性は、個人のプライバシーに関わる情報を電気通信役務者情報と位置付けて保護するというものです」(太田)。

これを受けて電気通信事業法およびガイドライン改正の検討を行なったのが、総務省の電気通信事業ガバナンス検討会です。同検討会はもともと無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報を保存する日本のサーバーが、中国人技術者によってアクセスされる状態だった不祥事を受けて立ち上げられた検討会です。そこに前述のプラットフォームサービス検討会の意見を含めて、電気通信事業法改正の検討が進められてきました。

法改正へ向けた動きに賛否両論

この法改正の動きについては賛否両論あります。

法改正への懸念を示し検討の見直しを求めるのは、経済同友会、在日米国商工会議所(ACCJ)、新経済連盟、日本経済団体連合会(経団連)などです。

たとえば、新経済連盟からは以下4つの懸念が示されました。ウェブ公開された電気通信事業ガバナンス検討会(第14回)配布資料によると、(1)総務省がネット利用企業/デジタルサービスを広範に網にかけた規制強化を行おうとしていること、(2)電気通信事業法が「情報取扱いの一般法」となり、二重規制と過剰規制をもたらすこと、(3)国際的に極めて異常なガラパゴス規制が、日本のデジタル化に悪影響を及ぼすこと、(4)半年間の非公開の会合での拙速な議論に基づき、このような大きな改正を行おうとしていること、とあります。

MyData Japanからの提案と意見

一方、法改正に向けた動きを支持する団体には、主婦連合会、全国消費生活相談員協会、(全相協)、日本インターネットプロバイダ協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)、MyData Japanなどがあります。

MyData Japanは市民の立場で個人中心のデータ活用を推進している一般社団法人で、太田も常任理事を務めています。MyData Japanでは、2021年12月24日に公式サイト上で『新経済連盟の「懸念」に対する懸念』を公表しています。

「新経連では(1)広範に網をかけた規制といいますが、実はこれまでと規制対象となる範囲は大きく変わりません。規制対象は、現行の電気通信事業法第4条(秘密の保護)の規定の適用がある、届出や登録などの手続の有無にかかわらず電気通信事業法上の電気通信事業を行う者、そして、電気通信事業法の適用除外とされている同法第164条第1項各号に定める事業を営む者(しゃ)です。ただ現状、後者の電気通信事業を営む者に分類されている巨大SNSや巨大検索サービスを提供するプラットフォーム事業者を電気通信事業者へ格上げすることが望ましいと考えます」(太田)

一方、(4)非公開での議論を問題視する新経連の意見にはMyData Japanも賛成だと述べています。

MyData Japanから提案としては、総務省に対して、改正の方向性を支持しつつ、規制が及ぶ対象(電気通信事業を営む者)や負うべき義務の内容がわかりづらいのでそれらの点を明確化する要望が盛り込まれています。

「また、ランチタイムトークでもたびたび取り上げていますがCookieなどのパーソナルデータ、電気通信事業法における電気通信役務利用者情報は、前述の電気通信事業者や電気通信事業を営む者以外の、さまざまな事業者が取得したりさらに第三者に送信したりしているのが現状です。実態に照らして、電気通信役務利用者情報を利用するすべての事業者が同法の規律が及ぶ対象として義務を課すべき、とMyData Japanでは提案しています」(太田)

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