電気通信事業法改正 続報

電気通信事業法改正 続報

2022年4月11日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年12月23日
  • タイトル:電気通信事業法改正 続報
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

電気通信事業者法の改正論議が産業界に波紋

2021年11月30日、日本経済新聞電子版イブニングスクープに掲載された「ネット履歴の外部提供に「拒否権」 利用者保護へ総務省」という記事は先日のランチタイムトークでも話題になりました。記事内容に関連して電気通信事業法の改正論議をデータサイン 代表取締役社長 太田祐一が取り上げました。

冒頭の記事には総務省がターゲティング広告などにおける、広告会社含む事業者へのユーザーのデータ提供に関して国際水準に近いルール整備に取り組むことが記されています。具体策の検討は、電気通信事業法や指針などの改正を視野に2021年12月から入るとのことでした。

ただ電気通信事業法の改正については、新経済連盟(新経連)などが懸念を示しています。

新経連のサイトに書かれた提言によると、(1)総務省が、ネット利用企業/デジタルサービスを広範に網にかけた規制強化を行おうとしていること、(2)電気通信事業法が「情報取扱いの一般法」となり、二重規制や過剰規制をもたらすこと、(3)国際的に極めて異常なガラパゴス規制が、日本のデジタル化に悪影響を及ぼすこと、また、半年間の非公開の会合で行われた拙速な議論に基づきこのような重大な改正を行おうとしていること自体にも大きな瑕疵がある、と主張しています。

ウチは「電気通信事業者」に該当するの?

電気通信事業法に定められた電気通信事業者にはいくつかの区分(届出/登録/認定)があります。登録電気通信事業者には固定電話やスマホ・携帯電話などの通信サービスを提供するNTTなどの事業者が該当します。ちなみに弊社データサイン(DataSign)は届出電気通信事業者です。総務省が公開する電気通信事業参入マニュアル[追補版]によると登録と届出の違いは原則として電気通信回線設備を設置するかしないかの要件で変わります(設備を設置しても届出になる場合もあります)。

現行電気通信事業法で、自社が「電気通信事業」に該当するかどうか判定チャートが同マニュアルに掲載されています。詳細はそちらに譲りますがポイントの1つは「電気通信役務を提供していても、他人の需要に応ずるために提供する事業でなければ電気通信事業には該当しない」ということです。

同マニュアルには電気通信役務を自己の需要のために提供している例として、「個人や企業のWebサイトの開設」と「自己のメールアドレスのためのメールサーバの運用」が挙げられています。

もう1つのポイントが、電気通信事業の登録または届出に係る規定などは適用されないものの、事業法の第3条に規定する「検閲の禁止」および第4条に規定する「通信の秘密の保護」が通信に適用される「電気通信事業法第164条第1項第3号事業を営む者(しゃ)」に該当するかどうかです。

「電気通信事業法の改正によって、銀行、家電メーカー、自動車メーカーなどが『電気通信事業者』に含まれるように懸念する指摘がありますが、より正確には『電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業』および『第3号事業を営む者』に該当するかどうかが判定基準と考えられます。ウェブサイトやアプリ提供サービスを運営している企業の一部は対象となる見通しです。また電気通信事業者の範囲に、1千万人以上のユーザーを擁するSNSや検索サービスを含めるという規制強化の議論も出ているようです」(太田)

日本のプライバシー保護もようやく欧米レベルに?

「欧州におけるGDPR(一般データ保護規則)とeプライバシー規則(ePrivacy Regulation)の関係は、日本における個人情報保護法と電気通信事業者法の関係とほぼ同じと捉えられます。もし2つの法律が補完し合うことになれば二重規制やガラパゴス規制ではなく、欧米のプライバシー保護水準に日本もようやく追いつけるといえるでしょう」(太田)

電気通信役務(サービス)を利用するユーザーに関する情報は、電気通信役務利用者情報と呼ばれます。総務省の電気通信事業ガバナンス検討会では、その情報に(日本では個人情報に現状該当しない)CookieやアドID(広告識別子)を含める検討を行っているようです。

「同検討会資料などによると、ユーザーと接点のあるウェブサイトやアプリ提供事業者側が取得する情報の種類や用途を、ユーザーが理解できる形で確認できる機会を与えることが必要ではないか、と問題提起しています。ただ資料を見ても具体的にどのような事業者が対象になるのか、どのような形で行うべきなのかいまひとつ判然としません。誤解を避けるためにも、より理解しやすい内容で開示されることを今後のオープンな議論を通じて期待したいと思います」(太田)

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