毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2024年7月25日
- タイトル:Google「3rd Party Cookie廃止」を廃止
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
サードパーティーCookieとプライバシーサンドボックスを併存
サードパーティーCookie(3PC)廃止に向けたChromeブラウザの対応に新たな動きがありました。プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)の公式サイトに投稿された2024年7月22日付のブログ記事が波紋を呼んでいます。
プライバシーサンドボックスは、リターゲティング広告などに用いられるサードパーティーCookieの代替技術として、グーグルなどが参画しW3Cで標準化が進められてきましたが批判も多く、進捗は芳しくありません。たとえば英国の競争・市場庁(CMA:Competition and Markets Authority)はかねてより、プライバシーサンドボックスはグーグルに有利にはたらき、市場を歪め、反競争的であると批判しています。
当該ブログ記事によると、プライバシーサンドボックスの開発グループは、サードパーティーCookieを廃止せずに、Chromeに新しい機能を導入すること、それによりユーザーは、ウェブ閲覧全体に適用される選択を十分な情報に基づいておこなえること(informed choice)などを提案しています。
また、プライバシーサンドボックスAPIは引き続き利用可能とし、プライバシーと利便性をさらに向上させるために投資する方針が記されています。
Chromeの3PC対応延命で上がった銘柄、下がった銘柄
英国CMAは、グーグルによるこの開発方針の変更について自身の公式サイトで言及しています。それによると、英国のデータ保護機関であるICO(Information Commissioner’s Office)と密接に協力し、グーグルの新しいアプローチを慎重に検討していくことが述べられています。併せてこの展開を踏まえ、2024年7月に予定していた四半期報告書の発表を見送っています。
ブラウザ市場で大きなシェアを持つChromeの開発方針の変更は、株式市場にもインパクトを与えました。
「発表の直後から株価が上がった銘柄、下がった銘柄どちらも見受けられました。サードパーティーCookieを用いたデジタル広告ビジネスを展開する既存のアドテク事業者などは、投資家から好感を持たれたようです。半面、ポスト3PCソリューションを推す事業者には逆風だった模様です」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
ChromeはGPCに標準対応しないの?
ところで冒頭ご紹介したブログ記事に記されている、ウェブ閲覧全体に適用される選択をユーザーが十分な情報に基づいておこなえること、すなわちインフォームドチョイス(informed choice)とはどのようなものなのでしょうか?
「詳細はまだわかりませんが、グローバルプライバシーコントロール(GPC:Global Privacy Control)を思い浮かべました」(太田)
GPCとは、ブラウザのユーザーが、個人情報の販売や共有を希望するかどうかなど、プライバシーに関する嗜好を企業に通知できるように提案された仕様です。「自分のデータを販売、共有しないで」という内容の信号を送ることで、ウェブサーバー側からのデータ取得を拒否する意思表示が可能です。
このGPCシグナルを標準仕様として送ることができるブラウザには、braveやMozilla Firefoxなどがあります。カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA:California Consumer Privacy Act)では、ユーザーの意思であるGPCシグナルを受け取ったウェブサイトは適切に対応をすることが義務付けられています。コロラド州、コネチカット州、ネバダ州の州法や、欧州のGDPR(一般データ保護規則)でも同様です。
「現時点でChromeブラウザにGPCの機能は標準搭載ではありません(拡張機能が必要)。インフォームドチョイスを最もシンプルに実現する方法はGPCへの標準対応ではないかと思いますが、グーグルは独自の仕様を提案するのでしょうか。気になるところです」(太田)