毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年2月16日
  • タイトル:Android Privacy Sandbox
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

プライバシーサンドボックスのAndroid版

2023年2月14日、グーグルはAndroid版プライバシーサンドボックスにおける最初のベータ版を公開したことを発表しました。Android OSのバージョン13がインストールされたデバイスを使うユーザーの一部や登録済みの開発者がテストに参加することが可能です。こちらの話題をランチタイムトークで取り上げました。

Android版プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox on Android)は、ウェブブラウザを対象とするプライバシーサンドボックスの仕組みや機能をAndroidアプリ向けに展開する取り組みです。

「既存の広告IDといった複数アプリに共通する識別子やフィンガープリントを使用せずに、モバイル広告とユーザーのデバイスをマッチングする仕組みを提案しています。2022年2月16日にグーグルが発表してからほぼ1年かけてAPIの実装が進められて模様です」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

Android版プライバシーサンドボックスのデベロッパープログラムは、アプリ開発者にAPIの初期テストに参加してもらい、フィードバックを提供する「デベロッパー プレビュー」と、安定版のAPIを(次にご紹介する)4つのソリューションに統合したうえで、一部ユーザーのAndroid 13デバイスで開発アプリをテストすることができる「ベータ版」の2つで構成されています。

開発の責任分界点が明確になるSDKランタイムに注目

ベータ版で利用できるソリューション案は次の4種類です(公式サイトの内容を参考に弊社で編集しています)。

ソリューションの名称 概要
SDKランタイム アプリをサードパーティーの広告SDK(ソフトウェア開発キット)と安全に統合するための仕組み。グーグルが提供するSDKランタイムをAPI経由で利用する。
トピック(Topics API) ユーザーレベルの識別子に依存せずに、インタレストベース広告のパーソナライズを可能にする仕組み
Android版FLEDGE 既存リターゲティング(リマーケティング)広告を代替する仕組み。サードパーティーとデータを共有することなく、過去のアプリエンゲージメント(商品カートの利用など)に関する情報に基づいてパーソナライズされた広告をユーザーに配信する。
アトリビューションレポート 広告のパフォーマンスを測定した結果に基づいて配信広告の最適化を行う機能。ユーザーレベルの情報の共有を制限する。

「この中で、個人的に期待しているのはSDKランタイムです。現状、アプリ開発者は、広告やアクセス解析などに用いるSDK(ソフトウェア開発キット)を自分たちで選択し、アプリに組み込む必要があります。プライバシーサンドボックスが実装されれば、将来的にはグーグルが提供するSDKをAPI経由で利用することになります。つまりSDKの品質や安全性についてはアプリ開発者ではなくグーグルが担保するため、双方の責任分界点が明確になり、開発しやすくなるメリットがあるといえます」(太田)

外部送信規律対応への負担も軽減される?

改正電気通信事業法が定める外部送信規律では、対象事業者は提供するアプリに用いるSDKについても、

  1. どのような情報を
  2. 誰に対して
  3. 何の目的で送信し
  4. 送信先では何に用いられるのか

ということを送信先ごとに具体的に記載する必要があります。SDKをアプリに組み込んでいた開発者はそれらを逐一調べる作業が負担になります。

「将来的にグーグルが提供するSDKランタイムを利用することになれば、アプリを提供する事業者側は、グーグルが開示する情報を記載することで負担軽減が期待されます」(太田)

ただし、ランタイムSDKを含むAndroid版プライバシーサンドボックスのAPIを利用するには、グーグルによる事前審査や登録が必要になります。

この日のランチタイムトークの後半では、トピック(Topics API)におけるトピック数の増加、Android版FLEDGEと、それに関連するアトリビューションレポートに関する説明、広告IDやアプリ共通識別子の動向にも触れました。