毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2024年9月12日 
  • タイトル:「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」に関する意見募集の結果 
  • メインスピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

寄せられた意見は2448件

「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」に関する意見募集(パブリックコメント)が2024年6月27 日から7月29 日まで実施されました。その結果を記した資料が、2024年9月4日に開催された第299回個人情報保護委員会で公表されました。本資料をランチタイムトークの話題に取り上げました。

1カ月ほどの意見募集の実施期間に、1731 の団体・事業者、個人から延べ 2448 件寄せられて関心の高さが窺えました。

個人情報保護法の3年ごと見直し規定に基づく個別検討事項は次の4つです。

  1. 個人の権利利益のより実質的な保護の在り方
  2. 実効性のある監視・監督の在り方
  3. データの利活用に向けた取組に対する支援等の在り方
  4. その他

各事項は複数の項目で構成され、今回のパブコメで特に意見の件数が多かったものは、次のとおりです。

  • 本人同意を要しないデータ利活用等 1,560 件(うち生成 AI に関するもの 1,486 件)
  • こどもの個人情報等 150 件
  • 生体データ 120 件
  • 不適正利用/適正取得 92 件
  • 漏えい等報告 67 件
  • 課徴金 52 件
  • 個人の権利救済手段 48 件
  • 「4 その他」について 48 件
  • オプトアウト等 47 件

課題の1つは企業活動と個人の権利利益のバランス

個人情報保護委員会は、寄せられたコメントのうちいくつかを「主な御意見」として意見募集結果(概要)に抜粋しています。

意見の多かった「本人同意を要しないデータ利活用等」は、個別検討事項「3 データの利活用に向けた取組に対する支援等の在り方」に関するものです。このうち、生成AIに関する意見ではウェブ上に散在する個人情報を、AIモデルの開発における学習データや入力するプロンプトに用いる際の規律に対するコメント、生成AIが個人の権利利益を侵害する可能性や例外規定の拡大に対する消費者側の懸念などが挙げられています。

また個別検討事項「1 個人の権利利益のより実質的な保護の在り方」に関して、こどもの個人情報等については、慎重に扱うべきとの意見がある一方で、安全管理措置などで事業者に過度な負担にならないことを望む声がありました。こどもの基準年齢や規制の内容については諸外国の法令とともに日本の事情を考慮すること、こども家庭庁など関係省庁を交えた検討を求める意見も記されています。

迷った時は個人情報保護法の原点に立ち返って

他方、個別検討事項「1 個人の権利利益のより実質的な保護の在り方」の中で「要保護性の高い個人情報の取扱いについて(生体データ)」にも100件を超える意見が集まりました。「生体データ」の定義の明確化をはじめ、医療や防犯、防災での利活用を妨げないことに対する指摘などがありました。

同じ個別検討事項における「「不適正な利用の禁止」「適正な取得」の規律の明確化」では、現状は「個人関連情報」にあたる電話番号、メールアドレス、Cookie IDなどの扱いに関して意見が割れています。

「個人に対する連絡が可能な情報として、Cookie IDが電話番号やメールアドレスと同列視されることに異を唱える事業者側に対して、特定のデバイスに通知できるCookie IDを含めて、それぞれ単体で個人情報として扱うべきという消費者側の意見がほぼ拮抗しています。データによる個人の選別から個人を保護するという趣旨での検討が望まれます」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

さて、今回の個人情報保護法の改正に関するパブコメに対して、行政や立法の府はどのように動くでしょうか。引き続き、皆さんとウォッチしたいと思います。