毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2024年2月1日
- タイトル:AppleのDMA(デジタル市場法)対応
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
EU域内向けiOSアプリの所有者や開発者に影響
2024年1月25日、アップルがEU域内でのiOS、Safari、App Storeに関する変更を発表しました。2023年5月に施行されたデジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)を受けた対応です。EU域内向けのiOSアプリの所有者や開発者(デベロッパー)に影響する内容が含まれます。その概要をランチタイムトークで取り上げました。
DMAは、デジタル分野の市場をより公正に、より競争力のあるものにするために「ゲートキーパー」として機能するプラットフォームに一定のルールを課す法律です。この法律は、デジタルサービスのユーザーの基本的権利を守る安全なデジタル空間をめざすデジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)と両輪をなすものです。
DMAのもとで2023年9月、ゲートキーパー6社が指定されました。アップルもその1社です。ゲートキーパーは、DMAに記載されている「やるべきこと(=義務)」と「やってはいけないこと(=禁止事項)」を遵守する必要があります。
代替アプリマーケットプレイス経由での配布もOKに
アップルは従来、iOSアプリの配布をApp Store経由のみに制限してきましたがDMAを受けて、App Store以外の代替アプリマーケットプレイス経由での配布を認めました。
ただし、代替アプリマーケットプレイスを提供するデベロッパーはアップルが認定します。また、ダウンロード可能なのはアップルに公証されたiOSアプリのみです。
「いわゆるサイドローディングを求める声に配慮したようですが、アップルの審査を通過していない野良アプリのダウンロードやインストールは除外されます。アップルはこれらの対応により、DMAの施行がもたらす、EU域内のiOSユーザーに対するプライバシーやセキュリティ上のリスクの一部を低減するのに役立つと主張しています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
アップルの優位性は変わらない?
今回の変更は、アプリ所有者が支払う手数料にも及びました。
App Storeで提供されるiOSアプリの手数料は、デジタル商品およびサービスの取引にかかる金額の10%または17%に引き下げられました。さらにApp Storeで提供されるiOSアプリは、3%の追加手数料を支払えばApp Storeの決済処理を利用することが可能です。App Storeの決済処理とは、アップルが提供する「アプリ内購入」(IAP:In-app Purchase)です。
加えてアップルは、DMA対応の一環でIAPだけでなく、代替決済処理業者の利用や、外部ウェブサイトでのデジタル商品やサービスの購入決済を認めました。
「とはいえ代替アプリマーケットプレイスや外部の決済サービスを利用する際に想定される手数料と、アップルが提供するApp StoreとIAPを組み合わせた手数料を天秤にかけると、依然として後者の競争優位性の高さは否めないと思います。どれだけのアプリ所有者、開発者が新たな選択肢に移行するのか気になります」(太田)
DMAはEU域内における法規制ですが、日本でも巨大プラットフォーマーの独占的な商取引に神経を尖らす公正取引委員会が、同様の規制強化に乗り出す動きも出ています。日本市場向けに提供されるiOSアプリ所有者や開発者、また関連する決済サービス事業者などが、どのように対応するのか注目されます。