毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2024年10月31日
  • タイトル:総務省実証、偽誤情報対策「Boolcheck」について
  • スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

SNSの投稿者は本人? それともなりすまし?

情報が錯綜する災害や有事、多くの人が集まるイベントや選挙活動などに関連し、ネット上の記事や投稿の発信者がはたして本人か、それとも誰かのなりすましか、と怪しんだ経験はありませんか。また逆に、本人が記事を投稿しているにもかかわらず「これはなりすましやフェイク投稿ではないか」と、読者や視聴者から疑いをかけられた方も実はいらっしゃるかもしれません。データサインでは、こうした誤解や混乱を減らそうと、投稿者本人による署名と生活者による検証を可能にするシステムの開発に取り組んでいます。

2024年7月、総務省が実施する「インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証事業」の1件にデータサインが提案した「個人の署名によるコンテンツの真偽表明データベース」が採択されました。

この事業を通じて社会実装を進める対策技術のテーマの1つに、「発信者情報の実在性・信頼性確保技術の導入促進」があります。開発中のシステムはこちらのテーマに関わるもので、名称は「Boolcheck」(ブールチェック)です。由来はプログラミングの条件式に応じて真偽値を返す「Boolean関数」です。

「ネット上の偽誤情報を排除することは重要ですが、併せて『この情報は投稿者本人が発信している』ということを生活者が判断できるようにするサポートは欠かせません」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

客観的な評価やコメントが真偽判断の材料に

ランチタイムトークでは、開発中のBoolcheckの利用シーンや画面イメージ、採用技術、開発の進捗状況などをお伝えしました。

まず、生活者が真偽の判断がつかない投稿やニュース記事を見かけたとします。そのときに、Boolcheckのアプリを立ち上げ、記事のURLを入力し、判定結果を表示します。

判定結果には、真、偽または、どちらともいえない、という3つの選択肢があり、それぞれに投票数やコメントが表示されます。投票やコメントを送信できる人は、自分のデジタルアイデンティティウォレット(DIW)に保存された電子証明書を用いて署名することが可能な第三者です。希望すれば、その人が実在することを対面でデータサインが確認(身元確認)し、その証明書をDIWに発行することが可能です。身元確認をする人には、ジャーナリストやメディアに所属する記者、なりすましに遭うリスクが高い著名人などを想定しています。

「身元確認をしなくても、自分のDIWで署名すれば投票やコメントが可能です。身元確認された人の投票やコメントと、そうではない人の投票やコメントがどれくらいあるか、評価や内容にどのような傾向があるのか、といった情報も、生活者が真偽を判断する際の参考になると考え、あえて2つの選択肢を用意しています」(太田)

プラットフォーマーにも期待されるメリット

データサインの開発チームでは、アプリにURLを入力して能動的に調べる前述の方法だけでなく、ブラウザの拡張機能として投票数やコメントを表示する仕組みや、プラットフォームに組み込む方法なども検討しています。

BoolcheckはSNSを提供するプラットフォーマー各社にもメリットが見込まれます。現在それぞれのSNSで投稿情報の真偽が個別に判定されています。一方、Boolcheckはオープンな分散型ID(DID)を利用し、APIを公開します。BoolcheckのネットワークにAPIを介して参加するプラットフォームは投票結果やコメントを相互に利用でき、真偽判定に投じていたコストの削減が期待されます。また一貫するUI/UXの提供により生活者の利便性も高まります。

「Boolcheckで公開予定のAPIを多くのプラットフォーマーに利用してもらえるよう働きかけたいと考えています」(太田)

なお、上述した投稿者の身元証明書の発行者(Issuer)は現時点でデータサインですが、将来的には他の発行者も参加する分散型のガバナンスをめざす方針です。

Boolcheckの公式リリースは2025年以降を予定しています。どうぞご注目ください。