毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2024年3月28日
  • タイトル:コンテンツの来歴証明技術「C2PA」
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

日本のカメラメーカーやニュースメディアが参画するコミュニティ

AI(人工知能)や画像・音声加工アプリの進展にともない、あたかも本物であるかのように合成した偽(にせ)情報(=ディープフェイク)の拡散が社会問題化しています。さらに科学的根拠や裏付けに乏しいデマなどの誤(ご)情報と併せて、偽・誤情報の氾濫に歯止めをかけようと、多くの企業や団体が連携する動きがみられます。

そうしたなかで注目されるのが、コンテンツの来歴や信憑性に関する技術標準を開発するコミュニティ「Coalition for Content Provenance and Authenticity」(以下、C2PA)です。

2021年2月に設立されたC2PAには、マイクロソフト、英国放送協会(BBC)、アドビ、アーム、インテル、オープンAI、そして画像や動画の来歴データ管理ソリューションを提供するトルゥーピック(Truepic)が参加しています。取り組みの柱としてニュース記事の起源(オリジン)追跡などを検討するProject Origin(PO)と、啓発活動と社会実装を進めるContent Authenticity Initiative(CAI)があります。CAIには311の組織が参画しており、ニコンやキヤノン、ソニー、日本放送協会(NHK)といった日本の企業や団体も加わっています。

誰が、いつ、どのアプリでコンテンツを編集したかを記録

C2PAでは、どのようにしてコンテンツの出所や加工の履歴を管理するのでしょうか?

C2PAおよびCAIの活動に参加するアドビのウェブサイトには、来歴を示すコンテンツ認証情報についての説明が記されています。

要約するとコンテンツ認証情報とは、「誰が、いつ作成したか」といった情報を、コンテンツのクリエイター自らが作成したコンテンツに追記したもの(メタデータ)です。たとえばA→B→Cと3人のクリエイターを経由して加工された作品の場合、それぞれのデータが開示されます。

ランチタイムトークでは実際に、C2PAのサイトにアクセスし、手許にあった画像データの来歴を確認してみました。C2PAが運営する検証ページ( https://contentcredentials.org/verify )では、コンテンツをアップロードすると、来歴情報が得られます。

「すべてのコンテンツの来歴が確認できるとは限りませんが、コンテンツに適切に付加されたデータがある場合、時間の経過とともにどのように内容が変化したのか履歴を辿ることができます」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

現在対応できるファイル形式は、avi、jpg、jpeg、m4a、mp3、mp4、pdf、png、svg、tif/tiffなど一般に使われることの多い動画や画像、音声ファイルです。

偽・誤情報の拡散防止に期待

「コンテンツの制作元については、たとえばコンテンツ認証情報の発行元であるアドビに登録された氏名や、SNSのアカウントがあれば、それらの情報を表示します。また発行元(例:アドビ)については、グローバルサインが発行する電子証明書を用いています。C2PAの仕様は(2023年3月30日配信ランチタイムトークで取り上げた)オリジネーター・プロファイルに通じる部分があります」(太田)

2023年3月27日に開催された総務省「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」(第14回)では、ヒアリングを受けたグーグルがC2PAに参加し、来歴情報に関する標準仕様の開発を進めていることに触れました。

巨大プラットフォーマーであるマイクロソフトやグーグル、そして生成AIを開発するオープンAIが参画するC2PAは、氾濫する偽・誤情報の「防波堤」になることが期待されそうです。