毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。
当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2022年8月4日
- タイトル:ニュースコメンタリー CCC社の会員データ販売など
- コメンテーター:データサイン 代表取締役社長 太田祐一、ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
この日のランチタイムトークではプライバシーテック界隈の気になる話題を解説しました。取り上げたテーマは、サードパーティーCookieの延命とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)における会員データのオープン化です。
サードパーティーCookieの延命
2022年7月27日、グーグルがPrivacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)のテスト期間を延長することを理由に、サードパーティーCookieのサポート廃止延期を発表しました。廃止は2024年末から段階的に実施するということです。
もともとグーグルは2020年1月にプライバシーサンドボックスを発表。W3Cでのオープンな仕様作成を前提としてサードパーティーCookie廃止を2年以内、2023年初めに廃止する意向でした。しかし、プライバシーサンドボックスの仕様や実装を巡るオンライン広告市場における議論、また公開テスト(オリジントライアル)で得られたフィードバックを受けて修正をたびたび余儀なくされています。
「プライバシーサンドボックスの各機能のリリースに、ある程度のメドが立つまではサードパーティーCookieのサポートを廃止しない、というグーグルの姿勢は当初から一貫しているともいえます」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
なおプライバシーサンドボックスの機能で、すでにリリース済みのものもあります。たとえば、ChromeブラウザのバージョンやOSの種類などを保持するUser Agent(ユーザーエージェント)の内容を、フィンガープリントに利用されないように、詳細化せずに提供することが可能なUser Agent Client Hints APIはその1つです。
T会員データのオープン化
続く話題が、Tポイントを基盤とした多様な事業を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、保有する会員データをオープン化するというニュースです。2022年7月28日、CCCマーケティングとトレジャーデータがCDP(Customer Data Platform)領域において業務提携を行い、CCCが有するユニークデータとトレジャーデータが有するデータ活用技術の掛け合わせにより提供されるデータサービス「CDP for LIFESTYLE Insights」として提供開始することを発表しました。
また、ユニークデータとは、
約7000万のシングルID、年間35億件以上の購買トランザクション、15万店舗のネットワークで扱われる60億種類の商品データ、数千項目からなる顧客DNAのペルソナデータ、オフライン・オンライン上の移動・行動データやメディア接触データ、またCCCマーケティンググループオリジナルのエンハンスデータなど
を指すとあります。
CCCマーケティングのニュースリリースによると、CCCマーケティングの「Treasure Data CDP」において、「Treasure Data CDP」の利用企業が保有する自社顧客データと、T会員規約等に同意したT会員に関するT会員データを、セキュアな環境下でプライバシーを保護した上で連携し、サービスを提供する、ということです。
ランチタイムトークではこのニュースを交えながらCCCが開示するプライバシーポリシーの内容や、個人情報および個人関連情報の第三者提供に対する同意の取得や撤回のあり方が話題になりました。
データ主体であるユーザーの意思や権利は?
この日は視聴者の方から多くの質問が寄せられました。
その中には、グーグルが開発を主導するプライバシーサンドボックスや、CCCの取り組みなどは、データ主体であるユーザーの意思や権利が尊重されているのかを問いかける内容もありました。
サードパーティーCookieのサポート廃止については、いきなり実施すれば、プライバシーインパクトの大きなフィンガープリントやウェブ横断的な個人の追跡といった、ユーザーを密かにトラッキングする手法をますますはびこらせる懸念があります。
「ユーザーの信頼を損なうことは結果的に、グーグル自体も恩恵を被るオンライン広告市場のエコシステムを崩す引き金になりかねません。また、各国プライバシー保護当局の指摘や批判をかわすねらいもあるでしょう」(太田)
ランチタイムトークではこれからも気になるニュースを取り上げていきたいと思います。皆さんのご興味のあるテーマやご意見・ご要望があればぜひお寄せください。