毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2024年1月18日
- タイトル:クッキー同意の簡素化に対する企業の誓約に関する原則案(Cookie Pledge)
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
Cookieの同意疲れやターゲット広告の課題解決に向けて
Cookieの利用に対する同意や拒否をユーザーに尋ねるCookieバナー。その説明文や挙動がわかりにくい、自分が望む選択肢がない、などの理由でストレスを感じたことはないでしょうか?
Cookieへの同意疲れやターゲット広告に関する課題に対し、2023年12月19日、欧州委員会は「Cookie同意の簡素化に対する企業の誓約に関する原則案」(以下、原則案)を公表しました。Cookie同意の簡素化に対する企業の誓約は、Cookie Pledge(クッキー誓約)と呼ばれています。
取り組みの発端は2023年3月28日に、ベルギーのブリュッセルで開催された欧州消費者サミット(European Consumer Summit)です。Cookieおよびターゲット広告に関連した消費者問題に対し、欧州委員会が利害関係者間で自主的な解決策を練ろうと、当該関係者と協力して取り組む意向を明らかにしました。翌月4月28日は、EUレベルの業界団体、消費者団体、グローバル企業を交えた第一回会議を開催。その後、誓約の原則案作成がオンラインで進められるなどして、今回の公表に至りました。
消費者のプライバシーや権益に配慮した8つの原則案
原則案は、AからHまで8項目で構成されています。概略を記します。
A:同意要求には、いわゆる必須クッキーに関する情報や、正当な利益に基づくデータ収集に関する言及は含まれない(正当な利益に基づくデータ収集については他の階層にあるページで説明すべきである)。
B:少なくとも一部のコンテンツが広告によって賄われている場合は、ユーザーが初めてウェブサイト/アプリにアクセスする際にあらかじめ説明する。
C:各ビジネスモデルは、簡潔、明瞭かつ選択しやすい方法で提示される。ユーザーを追跡するトラッカーを受け入れた場合と、受け入れない場合の結果に関する明確な説明も含まれる。
D:追跡型広告や有料オプションが提案された場合、消費者はプライバシー侵害のより少ない別の広告形態の選択肢を常に持つ。
E:広告目的のCookieへの同意は、すべてのトラッカーに必須とするべきではない。第二層のページでは、広告目的で使用されるクッキーの種類に関する、より詳細な情報を提供し、きめ細かく選択できるようにする。
F:消費者が選択した広告モデルを管理するために使用されるCookie(たとえば、特定の広告のパフォーマンスを測定するためのCookieやコンテキスト広告を実行するためのCookie)については、消費者がすでにいずれかのビジネスモデルへの選択を表明しているため、個別の同意は必要ない。
G:消費者は、最後の要求から1年間、Cookieの受け入れを要求されるべきではない。消費者の拒否を記録するCookieは消費者の選択を尊重するために必要である。
H:少なくともGと同じ原則で、Cookieの設定を記録する可能性を消費者に事前に提供するアプリケーションからの通知は許される。
事業の採算性や技術的な実現可能性などを模索
「原則案は全般に消費者側の視点に立ったものです。しかし、事業者側の採算性や技術面での実現可能性をめぐり意見が割れているようです」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
議事録にはこの原則案は、ユーザーに同意するか有料プランかの二者択一を迫る、いわゆる”Pay or OK”モデルに反するという指摘があります。
「Pay or OKモデルの可否について、この原則案がGDPRやeプライバシー指令に抵触しないか検討している欧州データ保護会議(EDPB)からも特に言及はありません。議論では、自分にマッチする広告が表示されるならば追跡されてもよいと考える消費者の意見も尊重されています。むしろ代替策として挙がるコンテキスト広告などに問題はないのか議論の余地があるでしょう」(太田)
原則案に関する会議の参加者は、いわゆるGAFAMなどグローバル企業をはじめ、メディアを含む中小規模の事業者、そして消費者側としてBEUC (European Consumer Organisation)、Mozilla、プライバシー保護に関する支援活動を展開する非営利団体のnoybの名前があります。一部の団体は、マーケットリーダーにより他の小規模な市場参加者の声がかき消され強制的な採択につながることを懸念しています。
最終版は2024年4月18日開催のEuropean Consumer Summit 2024で発表予定ですが、難しい線引きを迫られそうです。