毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2025年2月6日 
  • タイトル:DeepSeekについて
  • スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

価格破壊をもたらした中国発の生成AI

2025年1月27日、中国のAI(人工知能)企業であるDeepSeek(ディープシーク)が開発した低コストの生成AIサービスが市場に価格競争を巻き起こす見通しから、AI半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)を含むAI関連株は軒並み急落しました。

2023年5月に設立されたディープシークは、母体であるヘッジファンドの資金運用を担うAI技術の開発に向けて、中国国内の優秀な若手コンピューターサイエンティストを集めたといわれています。しかし、米国からの輸出規制によってエヌビディア製の最先端の演算装置(GPU)は使えません。性能が見劣りする先発ラインナップのGPUを用いながらも開発手法に工夫を凝らし、競合するOpenAI(オープンAI)の「OpenAI-o1」に匹敵する性能を備えた大規模言語モデル「DeepSeek-R1」をその10分の1程度の費用で開発したと話題になりました。

DeepSeekのアプリはApp StoreやGoogle Playでは無料で提供されています。米国のApp Storeではアプリのダウンロード回数がChatGPTを抜いてトップに躍り出た時期もあると報じられ、人気の高さがうかがえます。

ただし、そのセキュリティについて、日本の個人情報保護委員会が注意を喚起しています。

中国に保存されたデータには同国の法令が適用 

2025年2月3日、個人情報保議員会事務局は「DeepSeekに関する情報提供」と題する注意情報を公式サイトに発表しました。DeepSeekのプライバシーポリシーに次の内容が含まれるためです。

①当該サービスの利用に伴いDeepSeek社が取得した個人情報を含むデータは、中華人民共和国に所在するサーバに保存されること

②当該データについては、中華人民共和国の法令が適用されること

そして、②に関連して当該データについて、以下のような法令が適用されると指摘しています。

  • 中華人民共和国個人情報保護法
  • サイバーセキュリティ法
  • データセキュリティ法
  • 中華人民共和国国家情報法

透明性の高さを見せる一面も

中国のデータセキュリティ法では組織や個人に対し、公安機関や国家安全機関が、国の安全の維持・保護または犯罪を捜査する際にデータの取り調べに対する協力を義務付けています。

「中国の法律では、データを取り扱う主権は国にあると明示しています。中国のサーバーに保管されたデータについては、ディープシークも国の要請があれば提供しなければならないということです」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

米国では海軍など機密情報を扱う政府機関や関係企業などにDeepSeekの利用禁止を促す動きが出ています。

「中国の法律は要注意ですが、ディープシークという企業の取り組みには興味深い点があります。同社はDeepSeekの学習済みモデルをオープンウェイトで公開しており、基本的に誰でも自由に利用できます。たとえば中国以外に設置されたサーバー環境でDeepSeekを導入して運用することもできます。同社が政府寄りの企業なのか、信用できるかどうかは不明ですが、セキュリティ対策などの知見を持ったうえでツールとして利用する分にはよいのかもしれません」(太田)