毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2023年5月11日
- タイトル:Digital Markets Act
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
DMAとDSAはワンセット
2023年5月2日、EUでDital Markets Act(DMA:デジタル市場法)が施行されました。巨大プラットフォーマーが厳しい義務や禁止事項にどう対応するのか、と囁かれる同法ですが、そのポイントをランチタイムトークの話題に取り上げました。
DMAは、デジタル分野の市場をより公正に、より競争力のあるものにするために「ゲートキーパー」として機能するプラットフォームに一定のルールを課す法律です。2020年12月、欧州委員会により欧州議会に法案が提出されました。なお、同時期にDigital Service Acts (DSA:デジタルサービス法)案も同議会に提出されています。
DSAとDMAは1つのパッケージとして、ユーザーの基本的権利の保護および、企業に平等な市場環境を提供する、安全なデジタル空間を創出することを目的とし、プラットフォーマーなどのオンラインサービス提供者の義務や禁止事項を規定した法律です。DSAの施行は2024年2月以降の予定です。
ゲートキーパーに課せられる禁止事項とは?
DMAが定義するゲートキーパーには、オンライン検索エンジン、アプリストア、メッセンジャーサービスなど、いわゆるコアプラットフォームサービスを提供する大規模なデジタルプラットフォームが該当する可能性があります。
ゲートキーパーに指定された場合、DMAに記載されている「やるべきこと(=義務)」と「やってはいけないこと(=禁止事項)」を、指定されてから6カ月以内に遵守する必要があります。
ゲートキーパーの禁止事項としては、たとえば、
- 自らのプラットフォームでビジネスユーザーと競合する際に、ビジネスユーザーのデータを使用すること
- 自社製品やサービスを第三者のものと比べて有利にランク付けすること
- ターゲット広告を目的として、ゲートキーパー内のコアプラットフォームサービス以外で、有効な同意なしにエンドユーザーを追跡すること
などが挙げられています。それぞれの具体例としては…
- Amazon社が自社ブランド製品を開発する際に、Amazonに出店している企業(ビジネスユーザー)の売れ筋データを利用すること
- Google社が、検索結果上位に自社サービスを表示すること
- Meta社が、Facebookユーザーの行動履歴を、同意無しでinstagram内での広告表示に利用すること
などが考えられるでしょう。
インパクトが大きい義務とは?
一方、義務も複数列挙されています。その中でインパクトが大きいと目されるものの1つが、メッセンジャーサービスを提供するゲートキーパーに課せられる、基本的な機能の相互運用性の義務です。
メッセンジャーサービスを提供しているゲートキーパーA社があり、もしサードパーティープロバイダーB社からサービスの相乗りをさせてほしい、という要求があれば、基本的な機能、たとえば個人ユーザー間でのテキストメッセージの交換に対応しなければなりません。
「基本的な機能については、2024年3月のDMA発効時から対応する必要があるそうです。一方、複雑な機能、たとえばグループテキストメッセージや音声、ビデオ通話などは2年目以降でもよいとなっています」(太田)
ゲートキーパーが指定されるは2023年9月の予定です。指定に対する不服申し立ても可能ですが、ゲートキーパーに該当しないことを自ら立証する責任があるなど、今後の動向が注目されます。