デジタル市場法(Digital Markets Act)

デジタル市場法(Digital Markets Act)

2023年9月1日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年5月11日
  • タイトル:Digital Markets Act
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

DMAとDSAはワンセット

2023年5月2日、EUでDital Markets Act(DMA:デジタル市場法)が施行されました。巨大プラットフォーマーが厳しい義務や禁止事項にどう対応するのか、と囁かれる同法ですが、そのポイントをランチタイムトークの話題に取り上げました。

DMAは、デジタル分野の市場をより公正に、より競争力のあるものにするために「ゲートキーパー」として機能するプラットフォームに一定のルールを課す法律です。2020年12月、欧州委員会により欧州議会に法案が提出されました。なお、同時期にDigital Service Acts (DSA:デジタルサービス法)案も同議会に提出されています。

DSAとDMAは1つのパッケージとして、ユーザーの基本的権利の保護および、企業に平等な市場環境を提供する、安全なデジタル空間を創出することを目的とし、プラットフォーマーなどのオンラインサービス提供者の義務や禁止事項を規定した法律です。DSAの施行は2024年2月以降の予定です。

ゲートキーパーに課せられる禁止事項とは?

DMAが定義するゲートキーパーには、オンライン検索エンジン、アプリストア、メッセンジャーサービスなど、いわゆるコアプラットフォームサービスを提供する大規模なデジタルプラットフォームが該当する可能性があります。

ゲートキーパーに指定された場合、DMAに記載されている「やるべきこと(=義務)」と「やってはいけないこと(=禁止事項)」を、指定されてから6カ月以内に遵守する必要があります。

ゲートキーパーの禁止事項としては、たとえば、

  1. 自らのプラットフォームでビジネスユーザーと競合する際に、ビジネスユーザーのデータを使用すること
  2. 自社製品やサービスを第三者のものと比べて有利にランク付けすること
  3. ターゲット広告を目的として、ゲートキーパー内のコアプラットフォームサービス以外で、有効な同意なしにエンドユーザーを追跡すること

などが挙げられています。それぞれの具体例としては…

  1. Amazon社が自社ブランド製品を開発する際に、Amazonに出店している企業(ビジネスユーザー)の売れ筋データを利用すること
  2. Google社が、検索結果上位に自社サービスを表示すること
  3. Meta社が、Facebookユーザーの行動履歴を、同意無しでinstagram内での広告表示に利用すること

などが考えられるでしょう。

インパクトが大きい義務とは?

一方、義務も複数列挙されています。その中でインパクトが大きいと目されるものの1つが、メッセンジャーサービスを提供するゲートキーパーに課せられる、基本的な機能の相互運用性の義務です。

メッセンジャーサービスを提供しているゲートキーパーA社があり、もしサードパーティープロバイダーB社からサービスの相乗りをさせてほしい、という要求があれば、基本的な機能、たとえば個人ユーザー間でのテキストメッセージの交換に対応しなければなりません。

「基本的な機能については、2024年3月のDMA発効時から対応する必要があるそうです。一方、複雑な機能、たとえばグループテキストメッセージや音声、ビデオ通話などは2年目以降でもよいとなっています」(太田)

ゲートキーパーが指定されるは2023年9月の予定です。指定に対する不服申し立ても可能ですが、ゲートキーパーに該当しないことを自ら立証する責任があるなど、今後の動向が注目されます。

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