毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年8月31日
  • タイトル:Digital Services Act
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

オンライン上での有害行為や偽情報の拡散を防止

2023年8月25日以降、EUを対象とする「デジタルサービス法」の遵守を義務付けられた事業者は、適切な情報開示やユーザーの保護対策などを進めています。同法の概要や義務の内容、履行状況などをランチタイムトークの話題に取り上げました。

欧州委員会のサイトによるとデジタルサービス法(Digital Services Act:DSA)の目的は、オンラインにおける違法で有害な行為や偽情報の拡散を防ぐこと。これによってユーザーの安全性や基本的人権の保護、そして公正で開かれたオンラインプラットフォーム環境を創出することにあります。対象となる仲介サービス(intermediaries)の提供者やプラットフォームには、マーケットプレイスやソーシャルネットワーク、アプリストア、旅行予約サイトなどが含まれます。

「2022年11月のDSA施行後、オンラインプラットフォーム各社はアクティブエンドユーザー数の報告が求められました。報告されたユーザー数や事業者の特性に応じて事業者は4つのカテゴリーに分類され、ユーザーへの影響度が高い上位カテゴリーの事業者ほど厳しい義務が課せられています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

サービス提供の特性や規模に応じて4つに分類

4つのカテゴリーは、上位から順に次のように分類されています。

カテゴリー名 説明
規模が著しく大きいオンラインプラットフォーム(Very Large Online Platforms:VLOP)および検索サービス(Very Large Online Search Engines:VLOSE) 1カ月間に、欧州の人口4億5千万人の10%にあたる消費者が利用する影響度の高いプラットフォームや検索サービスが対象
オンラインプラットフォーム オンラインマーケットプレイス、アプリストア、ソーシャルメディアなど
ホスティングサービス クラウドやウェブホスティングサービスなどの提供事業者
仲介サービス ネットワークインフラを提供するプロバイダーやドメインネームレジストラなど

このうち4500万人以上のユーザーを擁するVLOPおよびVLOSEに指定されたのは、次の19社です。

VLOP(17社) VLOSE(2社)
1. Alibaba AliExpress
2. Amazon Store
3. Apple AppStore
4. Booking.com
5. Facebook
6. Google Play
7. Google Maps
8. Google Shopping
9. Instagram
10. LinkedIn
11. Pinterest
12. Snapchat
13. TikTok
14. Twitter
15. Wikipedia
16. YouTube
17. Zalando
1.Bing
2.Google Search

DSAにおける義務は、利用規約の提示をはじめ、通報、苦情、月間平均アクティブユーザー数などの各種情報開示、救済メカニズムの設置など多岐にわたります。

「上位カテゴリーになるほど、下位に課された義務に新たな項目が追加されてより厳密になります。たとえばオンラインプラットフォーム以上の事業者には、ダークパターンを禁止するための義務も追加されます」(太田)

アマゾンなどから不服申し立ても

「前掲19社のうち、アマゾンはDSAの基準に自社が適合しないと異議を唱え、また衣料品やコスメを販売するドイツ企業Zalandoは小売業が主たるビジネスモデルでありオンラインマーケットプレイスではないと訴えたことが報じられています。一方、グーグルのように、DSAに対応する透明性レポートを通じた情報開示などに取り組む姿勢を見せる企業もあります」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

2024年2月17日からは、EU全域でDSAの全面適用がなされます。EUにおける小規模プラットフォームなどを含めたすべての対象事業者が義務遵守を求められます。企業を監督するEU各国における当局の設置期限も同日となっています。