毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年1月26日
  • タイトル:米司法省、Googleを提訴
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

独占的なデジタル広告技術の濫用が米独禁法に違反

2023年1月24日、米司法省はカリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、テネシー州、およびバージニア州の司法長官とともに、グーグルへの提訴に踏み切ったと発表しました。グーグルによる独占的なデジタル広告が、米国の独占禁止法(反トラスト法)を構成するシャーマン法1条および2条に違反する、反競争的行為だというのが理由です。こちらの話題をランチタイムトークでは取り上げました。

提訴の概要を伝える米司法省のプレスリリースによれば、グーグルの反競争的行為とは主に4つあります。

  • 競合の買収
    広告枠を販売するウェブサイト(パブリッシャー)が用いる中核的なデジタル広告ツールをコントロールしている
  • グーグルが提供するツールの強要
    買収したツールにパブリッシャーをロックインしたうえで、パブリッシャーが利用するアドエクスチェンジ(広告オークション取引を行う機能)にアクセスしている
  • 広告オークションにおける競争を歪ませたこと
    リアルタイムで行われる広告オークション(RTB:real-time bidding)において、パブリッシャーが利用できるアドエクスチェンジをグーグルが提供するツールに制限し、競合のアドエクスチェンジの参入を阻んでいる
  • 広告オークションの操作
    競合の参入を阻むことでグーグルの優位性を保ち、オークションの仕組みを操作している

競合ツールを買収して独占的地位を築く

デジタル広告市場は、広告を打ち出す(インプレッションする)ために、諸条件にマッチした広告枠を買い求める広告主(バイサイド)、広告枠を販売するパブリッシャーおよび代理店(セルサイド)、そして両者を仲介する取引の場(アドエクスチェンジ)の主に3つの役割を担う関係主体で営まれています。

提訴内容によると、グーグルはそれぞれの市場で中核的なサービスを提供するツールを買収して、3つの役割それぞれで次のような高い市場シェアを握っています。

  • バイサイド:Google Ads(Advertiser Ad Network)により約80%、またDisplay & Video 360(DSP:Demand Side Platform)により約40%の市場シェア
  • セルサイド:DoubleClick for Publishers(Publisher Ad Server)により90%超の市場シェア
  • アドエクスチェンジ:Google AdExchangeにより50%以上の市場シェア

米司法省とグーグルの戦いの行方は?

「デジタル広告市場を、金融商品を売買する証券取引に当てはめると、株などの買い手と売り手、証券取引所の三者にとって必要な機能をほぼすべてグーグルが手中に収めているといえるでしょう。証券取引市場では売買に関する情報が事前に関係者相互に漏れ出ることは公平な競争を妨げるとして、厳しい規制が課せられています」(太田)

「提訴内容をみると、グーグルはセルサイドのツールであるDoubleClickを買収で得た際に、ユーザーのプライバシーを盾に、広告主とパブリッシャーとの間のベストマッチなどのために用いていたDoubleClickの識別子を使用できなくする、など自社に有利となる排他的行為をしていたことが問題視されています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

米司法省は過去に、前述のシャーマン法に違反するとして、マイクロソフトによるOS(Windows)とブラウザ(Internet Explorer)の市場独占や、統合販売による排他的行為を訴えています。

ブラウザ市場では2012年頃にグーグルのChromeがIEのシェアを追い抜き、2017年頃からひとり勝ちの状態です。

米司法省とグーグルの戦いの行く末はどうなるのか。今後も注目したいと思います。