毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2023年12月7日
- タイトル:デジタルプラットフォーム取引透明化法に基づく大臣評価(案)
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
特定デジタルプラットフォーム提供者を毎年チェック
2023年12月5日から2024年1月12日にかけ、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(以下、透明化法)に基づく「取引透明化法に基づく経済産業省大臣による評価(案)」についての意見公募が実施されました。
この日のランチタイムトークは、その評価(案)の中から「パーソナル・データの取扱い」に関する部分にフォーカスし、おもにデジタルプラットフォームを利用する消費者の立場で解説を加えました。
さて透明化法は、デジタルプラットフォームを運営する事業者(デジタルプラットフォーム提供者)に対して、取引条件等の情報の開示、運営における公正性確保、運営状況の報告を義務付けるとともに、評価・評価結果の公表等の必要な措置を講じることを定めた法律です。2021年2月1日に施行されました。
本法に基づいて国が行うデジタルプラットフォーム提供者からのヒアリングは、2022年度に続く2回目になります。本評価の対象である特定デジタルプラットフォームは、次のように定められています。
事業の区分 | 特定デジタル プラットフォーム |
特定デジタル プラットフォーム提供者 |
---|---|---|
総合物販オンラインモール | 1.Amazon.co.jp 2.楽天市場 3.Yahoo!ショッピング |
1.アマゾンジャパン合同会社 2.楽天グループ株式会社 3.LINEヤフー株式会社 |
アプリストア | 1.App Store 2.Google Playストア |
1.Apple Inc.及びiTunes 株式会社 2.Google LLC |
デジタル広告(メディア一体型広告) | 1.Google検索、YouTube に広告を表示 2.Facebook、Instagram に広告を表示 3.Yahoo!JAPAN、LINE及びファミリーサービスに広告を表示 |
1.Google LLC 2.Meta Platforms, Inc. 3.LINEヤフー株式会社 |
デジタル広告(広告仲介型広告) | 媒体主の広告枠に広告を表示 | Google LLC |
経済産業省「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(総合物販オンラインモール、 アプリストア 及びデジタル広告分野)」よりデータサインにて作成
プラットフォーム提供者に対する4つの確認項目
透明化法に基づくモニタリングの実施は経済産業省の所管ですが、「パーソナル・データの取扱い」については、2022年度に実施された総務省の「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」に沿って確認することになっています。
これにより総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」は、2023年9月19日開催の第47回会合でヤフー株式会社(2023年10月1日よりLINEヤフー株式会社)に対して、その翌週9月26日開催の第48回会合でGoogle LLC(グーグル)とMeta Platforms, Inc(メタ)の2社に対して、ヒアリングを実施しました
その後、第49回と第50回の会合で出された意見や審議が盛り込まれた内容が評価(案)の「パーソナル・データの取扱い」に記されています。特定デジタルプラットフォーム事業者からは、次に挙げる4つの確認項目について報告がありました。
- 取得する情報の内容、取得・使用の条件の開示
- ターゲティング広告を実施する旨及び事前の設定の機会やオプトアウト機会の提供についての開示
- 消費者がデータの取得・利用を拒否した場合の、サービスを利用するオプション提供の可否の開示
- データ・ポータビリティの可否・方法の開示
デジタルプラットフォームを利用する消費者向けの対応強化にも期待
上述の確認項目に対して、プラットフォームサービスに関する研究会の指摘も記されています。
「たとえば、確認事項1については、アカウントを取得していない利用者やログインしていない利用者に対しては、利用者情報が取得され利用される場合があるにも関わらず、必ずしも利用者情報の取扱いの概要がわかりやすく説明されているとは言えないこと、説明方法について改善の余地があることなどが指摘されています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
ただ、全95ページある評価(案)のうち「パーソナル・データの取扱い」について割かれているのは1ページほどです。
「全体は経産省の所管ということもあり、デジタルプラットフォーム提供者と、デジタルプラットフォームを利用する取引先事業者との取引関係における透明性の確保などが主眼にあるでしょう。ただ、リスクの大きさなどを考慮すると消費者視点の記述がもっと盛り込まれるべきでは、と考えます」(太田)
なお、2024年2月2日に経済産業省から発表された「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(総合物販オンラインモール、 アプリストア 及びデジタル広告分野)」における「パーソナル・データの取扱い」部分には、本稿の評価(案)で紹介した同内容が掲載されています。詳しくはそちらでお確かめください。
透明化法は、政府が、有識者をはじめ、デジタルプラットフォームを利用する事業者や消費者の意見も聴いた上で継続的に評価を行い、特定デジタルプラットフォーム提供者による自主的な運営改善を促すという、いわゆる共同規制の手法を採用しています。共同規制に対する実効性を問う声はメディアなどから挙がっていますが、今後の動向を注視したいと思います。