毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2024年8月8日 
  • タイトル:欧州委員会、Xのデジタルサービス法(DSA)違反に関する見解を公表 
  • メインスピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

EU市民が利用する「X」の不透明性を問題視

2024年7月12日、欧州委員会は「X」(旧Twitter)に対して、デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)に基づく予備調査結果を通知しました。ユーザーの判断を誤らせるダークパターンの利用、表示される広告に関する不透明性、研究者向けのデータ提供が妨げられていることの3点が指摘されています。

この通知に対してXを提供するX Corp.(以下、エックス)には弁明の機会が与えられますが、欧州委員会の指摘が最終的に妥当とされると、エックスに罰金の支払いなどが命じられます。こうした動きに対してエックスの会長であるイーロン・マスク氏は争う構えを見せています。

DSAは、オンラインにおける違法で有害な行為や偽情報の拡散を防ぐことで、オンライン上のユーザーの安全確保、基本的権利の保護、そして公平で開かれたプラットフォーム環境の創出を図ることを目的とした規制です。欧州議会と理事会の合意を経て2022年11月16日に発効しました。

認証済みを示す青いチェックマークはダークパターン

DSAでは、事業者から報告されたアクティブユーザー数や事業の特性に応じて、プラットフォーマーなどを4つのカテゴリーに分類しています(関連記事:2023年8月31日配信ランチタイムトーク「Digital Services Act」)。

XはDSAで指定されたVLOP(Very Large Online Platforms)の1つです。VLOPは欧州の人口約4億5千万人の10%に相当する4500万人以上の月間アクティブユーザーが利用する大規模なプラットフォームが対象です。

2024年7月12日公表の予備調査結果で通知されたXの問題点の1つは、DSA第25条(オンラインインターフェースの設計)に抵触する、ダークパターン(欺瞞的設計)です。

具体的には、「認証済み」のステータスを表す青いチェックマーク(Blue checkmark)は一定の料金を支払えば誰でも得られるようになったため、アカウントや内容の信頼性に関する判断を下すユーザーの能力に悪影響を与えている、また、悪意のある行為者が「認証済みアカウント」を悪用してユーザーを欺く証拠がある、といった指摘がなされています。

次に広告に関する透明性の不足です。これはDSA第39条(追加的なオンライン広告の透明性)に関わるものです。

「Xと同様に、VLOPに指定されたFacebookとInstagramを提供するメタは、検索可能な広告ライブラリをウェブ公開するなど、DSA対応を踏まえた取り組みを進めているようです」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

中毒性を指摘されたTikTok Liteのリワードプログラム

Xに関する通知の3つめが、研究者へのデータアクセス制限です。これは、DSA第40条(12)に規定されている内容で、DSAで定められた条件に沿った公開データへのアクセスを研究者に許していない、などの問題が指摘されています。

ところで欧州委員会はXのほかにも、TikTok、AliExpress、Facebookなどのプラットフォームについても同様の調査を進めています。

「ティックトックがフランスとスペインで立ち上げたTikTok Liteのリワードプログラムには、ユーザーが動画視聴やクリエイターのフォロー、友人の招待などを通じてポイントを獲得できる仕組みがありますが、ユーザーに中毒的な行動を促す可能性がある、として槍玉に上がりました。それに対してティックトックはEU圏内でのリワードプログラムの提供を自主的に停止しています」(太田)

本格化するDSAの適用を巡り各社の動向が活発化していますが、こうした動きは日本にも波及する可能性があります。引き続き、その動向に注目したいと思います。