毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2022年4月21日
  • タイトル:FLEDGE
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

閲覧履歴などの情報はブラウザ側に保持

W3Cで標準化が進められているプライバシーサンドボックス。その機能の1つに、サードバーティーCookieに基づくリターゲティング広告を代替するFLEDGE(フレッジ)があります。現時点でオリジントライアル(公開実証テスト)が実施されているようです。ランチタイムトークでは従来のリターゲティング広告とFLEDGEとの違い、プライバシー面で気になる点をデータサイン太田祐一代表取締役社長 太田祐一が解説しました。

FLEDGEにおいて、サイト閲覧履歴といったユーザー個人に関わるデータを保持するのは、広告配信事業者などが運用するサーバーではありません。ユーザーのブラウザです。サードパーティーCookieを用いる仕組みと異なり、広告事業者など第三者がブラウザ内に保存されるデータを直接閲覧することはないのでプライバシーは保護される、というのがFLEDGEの謳い文句です。

なお、リターゲティング広告(リマーケティング広告)の仕組みについては、こちらの記事「リマケに同意取得が不要な理由」で触れています。

広告オークションもブラウザ内で完結

さてFLEDGEでは、サイトを訪れるユーザーにとって興味があると思われる広告を、どのような仕組みで推定・表示するのでしょうか。

たとえば、あるユーザーがバイクメーカーのサイトを訪れたとします。バイクメーカーのサイトにはFLEDGEが提供するコード(APIを起動するJavaScript関数)が埋め込まれており、ブラウザでの閲覧時にコードが実行されます。するとこのブラウザは、バイクに関心のあると想定されるインタレストグループとしてマークされ、ある期間(1週間程度)登録されます。この情報はブラウザ側に保持されます。

この期間、このユーザーが当該ブラウザを用いて、他のニュースサイトなど広告メディアを閲覧したとします。そのことを検出した広告主が利用する広告プラットフォーム(DSP)は、バイクに関心あるインタレストグループに向けた広告枠の買い付け(オークション)に入札します。

「メディア側の広告プラットフォーム(SSP)では、オークションについてどのようなロジックを用いるか、という情報をブラウザに渡します。その情報に基づいてブラウザ内でオークションが実行されます。つまりサードパーティーCookieを用いたリタゲのように第三者のサーバー側にはデータが渡らず、オークションも実行されない、ということです」(太田)

トラステッドサーバーの信頼性は担保されるの?

とはいえ、FLEDGEにおける広告オークションにおいても広告事業者は「広告主が求める広告予算を越えていないか」「広告配信するメディアがホワイトリストに掲載されているサイトかどうか」といった情報をリアルタイムに確認しながら進める必要があります。そこで、DSPなどの広告事業者が用意するトラステッドサーバーが登場します。

そのトラステッドサーバーにブラウザ側の閲覧履歴などの情報は渡らないのでしょうか?

「広告事業者が用意するトラステッドサーバーの信頼性を担保できるのかどうか、今のところその仕様は明確になっていません。トラステッドサーバーの挙動を第三者が検証できるのか、透明性の高いガバナンスをどのように実現するか。FLEDGEにおけるプライバシー面での気になる点です」(太田)

FLEDGEの仕様はどのようになるのでしょうか。引き続き、定点観測したいと思います。