毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。
当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2021年5月13日
- タイトル:Google Play Safety Section
- 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
2022年1月以降に開示予定の「Google Play Safety Section」とは?
この日のランチタイムトークのテーマは「Google Play Safety Section」です。2021年5月6日にAndroid Developers Blogに投稿された記事に触れながら、データサイン 代表取締役社長 太田祐一が気になる点をコメントしました。
こちらの記事の執筆者は、グーグルのプロダクト、Androidセキュリティ、プライバシー部門の部長(VP, Product, Android Security and Privacy)のSuzanne Frey氏です。
Google Play Safety Sectionとは、AndroidアプリがダウンロードできるGoogle Playに新設される予定のセクションを指しています。このセクションには各Androidアプリが収集または共有するユーザーに関連するデータ、そのデータが保護されているかどうか、プライバシーとセキュリティに影響を与えるその他の詳細が、ユーザーが理解できるような形式で表示される見通しです。
「具体的にどのような形で表示されるのか、詳細は現時点でまだ明らかではありません。おそらくApp Storeに登録されたアプリに適用されるApp Privacyに近いものではないかと思います」(太田)
App Privacyは、アップルのAppStoreに登録されたアプリ開発者に対して、どのようなユーザーデータをアプリ開発者自身や第三者が取得しているか、開発者自らが提示した情報です。データサインが提供するマイデータ管理アプリ「paspit」(パスピット)を例にすると、App Storeのプレビューページ画面を下にスクロールすると表示される「Appのプライバシー」という欄に掲載されている情報がApp Privacyです。
ポリシーに準拠しないアプリのアカウントは停止!?
ブログ記事によると、Google Play Safety Sectionには、次のような点が強調される見通しです。
- データの暗号化などのセキュリティ対策を行なっているか
- ファミリーポリシーに従っているか(ファミリーポリシーとは子供に表示されるコンテンツを対象に適用される米国の児童オンラインプライバシー保護法COPPAや、EUの一般データ保護規則GDPRの要件が該当します)
- 機能の提供に当該データが必須か、またはデータを共有するユーザー側に選択肢があるのか
- Safety Sectionが独立した第三者によって検証されていること
- ユーザーがAndroidアプリのアンインストールを決めた場合、データの削除要求が可能であること
これらの情報について開発者が誤った情報を表示し、ポリシーに違反していることが判明した際には、グーグルは修正を求めること、さらに準拠しないアプリにはポリシーを強制適用することが記されています。
「要するに準拠しない場合はアカウント停止しますよ、というスタンスです。各要件について詳細な調査が必要ですが全般的にみると、ユーザーにデータ共有に関する選択肢を用意する、ユーザーからのデータの削除要求が可能である、などアプリ開発者に課される条件はApp Privacyより厳しいかな、という印象です」(太田)
市場のバランスを維持する第三極が必要か?
Google Play Safety Sectionの実施は、2022年の第2四半期(2022年4月)からの見込みです。今回記事で発表された事前通知に続いて、2021年7月にはポリシーが適用開始となります。2021年10月から、アプリ開発者はGoogle Playコンソール経由で情報を記入することができる見通しです。アプリおよび記入内容についてGoogleの審査を経てOKであれば公開されます。公開された情報をユーザーがGoogle Playで目にすることができるのは2022年1月以降の予定となっています。
「2022年1月は、ChromeブラウザにおけるサードパーティーCookieの廃止が見込まれる時期と重なります。スマホアプリではユーザーの同意不要で利用されるAndroidアプリのユーザー識別子(ADID)の扱いがどうなるか気になります」(太田)
さて、Google Play Safety Sectionというユーザーのプライバシー配慮は歓迎すべきグーグルの対応のようにも見えますが、「プライバシー規制対応の仮面を被ったプラットフォーマーによる独占やユーザー囲い込みの強化ではないか」という見方も一方ではあります。
「市場におけるバランスを取ることを考えると、アップルやグーグルに対抗する第三極となる存在が必要な頃合いかな、と個人的には思います」と太田。今後も業界の気になる動向をウォッチしていく考えです。