Googleの発表が広告業界に拡げる波紋

Googleの発表が広告業界に拡げる波紋

2021年4月9日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年3月11日 
  • タイトル: Googleの発表が広告業界に拡げる波紋
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

「ウェブ横断的に個人を追跡する代替的識別子の構築をしない」けれど実態は?

2021 年3月4日、Google Japan Blogに「よりプライバシーに配慮したウェブの実現に向けて」というタイトルのブログ記事が発表されました。こちらの記事が広告業界に波紋を拡げていますが、なぜでしょうか。データサイン 代表取締役社長 太田祐一がランチタイムの話題に取り上げました。

サードパーティCookieサポート廃止後の目指すべきデジタル広告の姿とは――。この議論の行方についてはプラットフォーム事業者(※1)と、アドテク事業者(※2)との間で、足並みが揃っていません。

Googleのブログ記事には「Google は、サードパーティ Cookie のサポートを段階的に終了させた後、ウェブ横断的に個人を追跡する代替的識別子の構築をしないこと、また広告製品でこれらを使用しないという明確な方針を本日発表します」とあります。

これについて太田は、「『代替的識別子の構築はしない』と記していますが、アドテク業界が推進するメールアドレスベースのID、Unified ID 2.0などの代替識別子がブラウザで使えなくなるわけではありません。代替識別子がすべて使えなくなるような誤解を与えかねない表現ですが、注意が必要です」と指摘しました。

また、「Googleは『広告製品でこれら(代替識別子)を使用しない』とありますが、Googleが開発・利用するAAID(Android Advertising ID)は代替識別子に該当しないのだろうか、という疑問が残ります」(太田)

 Googleだけトラッキングできるのは不公平では?

さらに、Googleのブログ記事には次のように綴られています。

「他社サービスでは、たとえば個人のメールアドレスに基づく PII ( Personally Identifiable Information:個人を特定し得る情報 ) グラフのような、ウェブ横断的に広告トラッキングを行うためのユーザー識別子を提供する可能性がありますが、Google はこれを行いません。このようなソリューションは、プライバシー保護に対する利用者の期待の高まりに応えられないだけでなく、急速な厳格化をみせる規制への遵守を困難にするものであり、長期的に持続可能な投資ではない」と記しています。

こちらの記述について、「Google自体はファーストパーティデータでいくらでも個人をトラッキングできるのではないか、という点でアドテク事業者の反発を招いている模様です」と太田は指摘します。

Googleでは、アドテク業界に対してサードパーティーcookie用いるリターゲティング広告を代替し、さらにユーザーが気づかないうちにブラウザを一意に識別するフィンガープリンティングを抑止するため、プライバシーサンドボックスを提案しています。

「サイト訪問者の興味ある情報をブラウザ側が保持して、アドテク事業者がアクセスするサーバーに保持しないのがプライバシーサンドボックスの基本仕様です。たとえば、ブラウザ側で判定されるセグメント情報を利用するFLoC(協調機械学習により生成されたコホート)を用いる仕組みは、たとえば、自動車に興味のあるユーザーと自転車に興味のあるユーザーをコホートと呼ぶグループに分けます。アドテク事業者はコホートIDのみ参照できますが、『Googleだけは全部参照できるのに不公平』『そもそも使いづらい』といった批判や不満、『コホートIDがフィンガープリンティングの元データとなる抜け道ができるのでは』という懸念も拡がっています」(太田)

むしろメールアドレスベースのIDの方がユーザー個人の権利を堂々行使できるのでは

議論はこのように迷走していますが、太田は次のように1つのアプローチを示します。

「アドテク事業者は『マーケターの皆さん、FLoCの広告効果はいまひとつなので、いままで通りターゲティングしたいのであれば、サードパーティCookieを利用しない当社のIDグラフやメールアドレスベースのIDがオススメですよ』とアピールするチャンスだと思います。同時に、広告を閲覧するユーザーに対しては、『あなたにフィットする広告を出すために、メールベースIDの利用に同意していただけますか』とオープンに尋ねるようにすればよいと思います。それについてはユーザーがOKと同意すれば広告に使えるわけです」(太田)

特定の個人を識別することが可能なメールアドレスをベースとしたIDであれば、ユーザーがそれを取り扱う個人情報取扱事業者に対して「どのような個人の属性情報が紐づけられているか」「どのような目的で利用しているか」などの情報開示、利用や第三者提供の停止に関する請求権が、個人情報保護法で定められています。

「もちろん、メールアドレスベースのIDを敬遠するユーザーもいることでしょう。ただ、個人のデータ・コントローラビリティが法律で裏付けられている分、仕様がブラックボックスの仕組みを使うよりも、プライバシーに配慮されているといえるのではないでしょうか」(太田)

デジタル広告市場というエコシステムを形作るプラットフォーム事業者とアドテク事業者は本来、互恵関係にあるはずです。ユーザーのプライバシー保護と広告エコシシテムの妥協点を探る動きは続いています。


※1 自社サイトが発行するIDを付与した多数の利用会員を擁して会員データをもとに自社メディアで広告ビジネスを展開する事業者

※2 会員組織基盤やSNSメディアを持たないものの、様々なWebサイトのデータを収集しながらターゲティング広告などを打ち出す事業者

関連記事

お問合せ