毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2025年1月30日 
  • タイトル:IAPP Global Legislative Predictions 2025
  • スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

専門家が分析・予想する2025年の動向

主要な国と地域のプライバシー関連法制の動向および2025年の見通しをまとめたレポートがIAPPから発表されました。「IAPP Global Legislative Predictions 2025」と題する本レポートを話題に取り上げました。

IAPP(International Association of Privacy Professionals)はプライバシー、AI ガバナンス、責任あるデジタル技術の利用(デジタル レスポンシビリティ)に通じたデジタル領域の専門職を定義・育成する非営利団体として、2000 年に設立されました(本部は米国ニューハンプシャー州)。人工知能のガバナンスに関するプロフェッショナル資格(AIGP)やデータ保護責任者(DPO)などをめざすための資格(CIPP)の認定による実務者のキャリア開発と向上、企業など組織のデータ管理と保護を支援しています。

本レポートは2025年1月に発表されました。今回は67の国と地域を対象にしており、プライバシー保護、AIガバナンス、サイバーセキュリティといったトピックスについて各対象国の動向や見通しを法務の専門家などが分担して執筆しています。

日本については、個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しの動きが紹介されています。2024年10月16日に公表された「個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しの検討の充実に向けた視点」に示唆される欧州GDPR(一般データ保護規則)のような踏み込んだ制度改革は短期的には実現が難しいとの見方を示しています。

米国はイノベーション重視に方針転換

ランチタイムトークでは、気になる対象国の動向をいくつか紹介しました。その中で米国の状況に触れましょう。

2024年の選挙後、共和党が多数を占める議会とトランプ大統領の下での変化が注目される米国(United States)では、バイデン政権下のAIガバナンス施策を撤回し、イノベーション重視の方針が示されています。

「すべての州を横断する包括的なプライバシー法案の審議と広範なAI規制は当面進展が期待できないようです」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

また、米連邦取引委員会(FTC)の委員長で、過去にアマゾン・ドット・コム(アマゾン)に対して反トラスト法(独占禁止法)の適用を主張したリナ・カーン氏の退任にともない、FTCの方針も変わる可能性が高まっています。プライバシー保護については超党派で現状支持されるものの、企業が消費者のデータをどのように収集、分析、利用、販売するかなどを規制する法律(Trade Regulation Rule on Commercial Surveillance and Data Security)の審議は継続が不透明です。

「欧州委員会によるEU米国間(EU-U.S.)データプライバシーフレームワークに対する十分性認定も振り出しに戻る可能性があるかもしれません」(太田)

2025年は「変革の年」に 

レポートは、2024年は世界的にみて新たな法律の出現、政策の優先順位を変える選挙、重要な執行措置などデータガバナンスの領域では活発な動きがあったと総括しています。そしてこの傾向は2025年も続き、特にデータ保護、AIガバナンス、サイバーセキュリティにおいては変革の年になるという見通しを述べています。

既存の規制や枠組みを実施し続ける国もあれば、新たな方針で法整備を進める国もあり、AIガバナンスや子どものプライバシーといった分野は、多くの法域で引き続き重要な焦点となることが予想されています。