毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年10月5日
  • タイトル:LINEヤフーのプライバシーポリシー
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

グループ再編後のプライバシーセンターをチェック

2023年10月1日、Zホールディングス株式会社、LINE株式会社、ヤフー株式会社、Z Entertainment株式会社およびZデータ株式会社がグループ内再編をおこない、「LINE ヤフー株式会社」(以下、LINEヤフー)として新たに業務を開始しました。同社ウェブサイトのプライバシーセンターや、パーソナルデータの扱いに関する同意取得に関する話題をランチタイムトークで取り上げました。

今回の再編にともなってLINEヤフーの利用規約やプライバシーポリシー、プライバシーセンターなども再整備されたようです。「LINEヤフー プライバシーセンター」で確かめてみました。

同プライバシーセンターには、LINEヤフーにおける「パーソナルデータ」の定義などが説明されています。それによると、パーソナルデータとは「特定のどなたであるかを識別することができる「個人情報」が含まれる場合があり」また、「個人情報のほか、特定のどなたであるかは識別できないものの、「誰かの情報ではある」という程度の識別性を有しているすべての情報が該当」するとあります。

例として、「お客様がご利用になっているブラウザーを識別するための情報(識別子)」がLINEヤフーに送信され、その「アクセスを集計することで、ある特定のブラウザーをお使いのお客様がどのウェブページにアクセスしたかを知る」ことが記されています。

なお、「クッキー、広告識別子等が含まれる情報」についてはパーソナルデータにおける個人情報ではなく、個人情報保護法に定義される「個人関連情報」に該当すると記されています。

新規会員登録作業を通じてユーザーへの説明や選択肢を確認

「一般ユーザーが、LINEヤフーが提示するプライバシーポリシーに接する機会は主に会員アカウント登録時だと思われます。そこで実際にYahoo! JAPANとLINEで新たに会員登録しながら、プライバシーへの配慮がどのようになっているのか確認してみました」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

Yahoo! JAPANではアカウント登録する際には、生年月日と郵便番号の入力が必須でした。

「郵便番号の入力に先立って、どのような場合に郵便番号を用いるのか、という利用目的や用途に関する簡潔な説明が添えられているとよいな、と個人的には思いました。また、広告メールなどの配信に先立ちユーザーからの事前同意が必要なオプトインメールにはユーザーの選択肢が用意されており、法対応がなされていることがうかがえました」(太田)

一方、LINEでは友達の追加設定でユーザーの年齢確認が求められました。通信キャリアとの契約がまだできないこどもが設定する場合は親の確認を必要とする旨が、設定画面を通じて認められました。

自分はいったい「どの段階」で同意をしたの?

「とはいえ、気になる点もありました。LINEでのアカウント登録後、設定画面の『ウェブ行動履歴を利用した追跡型広告の受信』を見るとONになっていたことです。『どの段階で同意したのだっけ?』と思わず首をかしげました。どこで何の同意を取得しているのか、データ提供主体にはもっとわかりやすく表示すべきと個人的には思いました」(太田)

個人情報保護委員会が公表する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の2-16 「本人の同意」をみると、

「本人の同意を得(る)」とは、本人の承諾する旨の意思表示を当該個人情報取扱事業者が認識することをいい、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法によらなければならない。とあります。さらに本人の同意を得ている事例として、次の6つが挙げられています。

  • 事例1)本人からの同意する旨の口頭による意思表示
  • 事例2)本人からの同意する旨の書面(電磁的記録を含む。)の受領
  • 事例3)本人からの同意する旨のメールの受信
  • 事例4)本人による同意する旨の確認欄へのチェック
  • 事例5)本人による同意する旨のホームページ上のボタンのクリック
  • 事例6)本人による同意する旨の音声入力、タッチパネルへのタッチ、ボタンやスイッチ等による入力

「ガイドラインでは、同意が得られていない事例の言及がありません。アカウント登録時における手続きが、個人情報保護法の観点から適切に同意を得ていることになっているのかどうか、という論点は棚上げのままではないか、と個人的には憂慮しています」(太田)

ユーザーを煙に巻くことのない、明快な説明と選択肢の用意、システムへの反映などを通じてサービス提供側とのよりよい信頼関係の構築が期待されます。