信頼が下手な日本人

信頼が下手な日本人

2021年6月9日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年4月15日 
  • タイトル:信頼が苦手な日本人 
  • 発表者:データサイン ビジネスデベロップメント担当 宮崎洋史

日本人は米国人と比べて他人を信頼しない?

2021月3日11配信のランチタイムトークではTrusted Web推進協議会が発表したホワイトペーパーをご紹介しました。その中で、現在のインターネットやウェブの仕組みでは、知らない者同志が信頼を確保するには制約があり、確認・検証できる領域が狭くなっている、という指摘がゲストスピーカーからなされました。今回のランチタイムトークでは、こちらの信頼(トラスト)についてデータサイン ビジネスデベロップメント担当 宮崎洋史が取り上げました。

トラストとは「事実を確認しない状態で、相手先が期待したとおりに振る舞うと信じる度合い」であると、前出のTrusted Web推進協議会のホワイトペーパーに定義されています。同協議会では、インターネットやウェブにおけるユーザーの検証可能領域を増やし、盲目的にトラストする領域を小さくすることが望ましいと提言。そのために相手やデータに関する信頼性を、第三者によるレビューなどを通じてユーザー自ら検証できる機能の具体化などを検討しています。

「僕はこの話を聞いた時、『もしそのようなインターネットやウェブが将来実現したならば、少なくとも日本人にとっては活躍しやすい環境になるかな?』と思いました。というのも、以前読んだある書籍の内容を思い出したからです」(宮﨑)

その書籍とは「安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方」 (中公新書、初版1999年6月1日発行)です。著者は山岸俊男氏。北海道大学文学部教授、同大学名誉教授、玉川大学脳科学研究所脳科学研究センター教授などを歴任した研究者です。

書籍では、各種実験を行った結果に基づいて、日本人は米国人と比べて他人を信頼しない、という特性が見出せることを主張し、(初版発行時の1999年時点で)これからの世の中において日本人のこの特性は不利である、と結論しています。

限られた情報の中で相手の行動を予測する実験

信頼には、能力(例:○○ができる)に対すると信頼と、意図に対する信頼の2つに大別されることが書籍に述べられていますが、論点は後者です。

「騙される可能性がある中で、相手の行動に期待すること。特に、知らない相手がどれだけ信頼できる人間なのかについてのあなたの予想は一般的信頼と呼ばれ、高信頼者とは端的に言うと『渡る世間に鬼はない』と思う人、低信頼者とは要するに『人を見たら泥棒と思え』と思う人、というように定義されています」(宮崎)

書籍によると、一般的信頼を計測するために実施した質問紙調査で次の3つの質問を日米の回答者に投げました。

  1. たいていの人は信頼できる?
  2. 他人は、隙があればあなたを利用している?
  3. たいていの人は、他の人の役に立とうとしている?

結果は…

  1. ハイと答えた米国人と日本人はそれぞれ47%、26%
  2. そんなことはない、と答えたのはそれぞれ62%、53%
  3. ハイと答えたのはそれぞれ47%、19%

…といずれの回答も10%近い差がついたそうです。

上述の質問紙調査結果は回答者の主観に基づくものです。そこで山岸氏は客観的な結果を得るために2種類の実験を行います。いずれも「囚人のジレンマ」を利用するもので、参加者が互いに協力しあうと全員が利益を得られ、各人が自分の利益だけを考えて行動すると誰もが不利益や損を被る、という状況を作り出し、その中で参加者それぞれの行動を調査しました。

実験1は、各被験者に贈与された元手(100円)のうちから、いくらならば見知らぬ他人へ寄付するか(しないか)の金額の多寡を題材にしています。一方、実験2では、知己の相手の取引行動(寄付か収奪か)をお互いに予測し、その的中率を調査しました。それぞれ見知らぬ相手、および見知っている相手に対する一般的信頼の程度がどれくらいあるかが、協力行動の選択にあたって重要になります。

実験内容および結果の詳細は書籍に譲りますが、質問紙調査の結果と実験の結果はほぼ整合する結果となりました。

「実験1の結果では、寄付したのは米国人が56%、日本人が44%でした。また高信頼者は平均55円、低信頼者は平均33円を寄付しました」(宮崎)

実験1の結果だけみると、米国人のほうが日本人よりも高信頼者が多い、というようにも受け止められます。ところで高信頼者の人は(米国人でも日本人でも)、ただ騙されやすいだけのお人好し、というのでしょうか?

「そうではないようです。実験2の結果から、見知っている相手の行動を予測するのが上手い人の多くが高信頼者である、という傾向が浮かび上がってきました。人を信じる傾向の強い高信頼者は知己の相手の行動(寄付と収奪)を予測することも上手で、単なるお人好しではない、といえそうです」(宮崎)

検証可能な部分が多い社会は日本人が活躍しやすい?

書籍の調査結果は日米の比較ですが、他の国の人を対象にした調査では違う傾向が出てくるかもしれません。また2021年の今日同様の調査を行ったらならば異なる結果になる可能性もあります。とはいえ、現代社会の日本人は限られた情報の中で相手の心理を読み、行動を予測するのが得意とは言い切れないようです。

冒頭でご紹介したように、盲目的に相手をトラストする領域が現在よりも小さくなるというTrusted Web。同推進協議会の資料には、Don’t trust, verify、つまり、(情報がほぼない中で見知らぬ相手をやむを得ず)信頼する、のではなく、自ら相手を検証・確認する手段を活用しよう、というキャッチフレーズが記されています。

「巨大プラットフォーマーをここまで信頼しているのに、他人には心を許していないのが不思議」「検証可能な部分が多い方が、日本人が活躍しやすい社会かもしれない」――。この日のランチタイムトークでは視聴者の方から多くのご意見や質問をいただきました。皆さんは、どんなふうにお感じなられましたか? 

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