毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年1月21日 
  • タイトル: ニュースコメンタリー
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一/ビジネスデベロップメント担当 宮崎洋史

トランプ支持者が集うSNS「Parler」へのサービス提供をAWSが停止

今回のランチタイムトークでは、近頃気になるデジタル広告関連のニュースを2本取り上げコメントします。コメントするのは、データサイン代表取締役社長の太田祐一と、ビジネスデベロップメント担当の宮崎洋史です。

2021年1月10日、米Amazon.com傘下のAWSが、SNS「Parler」が運用するAWSのサーバーを停止した、というニュースが報じられました。Parlerには、トランプ大統領支持者を中心に、過去に過激な投稿をして他のSNS(Twitter等)のアカウントを停止された人々が大量に流入していたといわれています。同年1月6日、トランプ大統領支持者が連邦議会議事堂に乱入し、犠牲者を出した事件の直前にもParlerで支持者らは連絡を取り合っていたようで、「Parlerが暴力を奨励する投稿を放置したことがAWSの利用規約に反した」とAWSによるサーバー停止の原因が報じられています

「この話題で思い出したのが、ゲンロンカフェなどをグループ会社に持つ出版社のゲンロンがニコニコ動画での配信をやめて、独自の動画配信プラットフォーム『シラス』をAWS上に構築し、2020年10月から本格スタートした、という話です。その頃シラスの中の人が番組で『AWSというのは道路みたいなものでみんなが自由に通れるものだ』と発言していた記憶があります。ただ、今回のParler停止の件から、無制限に許された自由ではないんだよ、ということがわかります」(宮﨑)

議事堂乱入事件の直後から、トランプ氏のアカウントが、TwitterやFacebookでも停止(いわゆる垢BAN)されるなど、巨大プラットフォーマー各社が同様の措置を講じました。こうした事業者のトップは民主党支持者が多い、とかねてより指摘されています。民主党側からの圧力があったのでしょうか?

「それは定かではありません。ただ、日本では過去に、漫画を無料で読めるサイト『漫画村』の違法性が問題となった頃、悪質サイトへのブロッキング要請を政府が検討していたことが、賛否両論を招きました。インターネット上における通信の秘密を侵害する、憲法が禁止する検閲にあたるおそれがある、などとして批判する立場もありました」(太田)

Wikipediaによると、インターネットコンテンツセーフティ協会は、漫画村問題で、政府によるブロッキング対応が拙速である点を憂慮する、とした声明を発表しています。また、こうした世論の突き上げに対して当時の日本政府は、「あくまで法制度整備が行われるまでの臨時的かつ、緊急的な措置」だと回答しています。

「いまやGAFAのサービスは生活や仕事に欠かせないサービスです。どこまでの情報共有やコミュニケーションならば利用規約に反しないのか。今回のParler停止におけるAWSの判断基準、また垢BANに対するプラットフォーマー各社の判断基準、背後に政権が関与しているのであれば、いわば緊急的な措置だったのかどうか。明確な説明を利用者として、国民として知らされるべきではないかと思います」(太田)

メッセージアプリ「WhatsApp」からユーザーが大量流出

気になるニュースの2本目は、メッセージアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」のユーザーが競合する他のアプリに大量流出している、という話です。

「WhatsAppは、Facebookが買収した企業なのですが、2021年になってFacebookがアプリのプライバシーポリシーを変更しました。WhatsAppでやりとりされるメッセージなどのデータをFacebook側と共有します、というものでした。Facebookとしてはよりよいサービス提供のためかも知れませんが、メッセージをFacebookに見られることを敬遠したユーザーがどんどん他のサービスに移行していったそうです」(太田)

テスラのイーロン・マスクCEOは自身のツイッターで「Signal(シグナル)を使え」と記しています。Signalは、End to End暗号化によりメッセージを第三者から秘匿する暗号化メッセージアプリです。マスク氏のツイートのリプライには、「Telegram(テレグラム)にしよう」というものもあります。TelegramもEnd to Endの暗号化通信を行うサービスです。

ちなみに報道によると、上述の元・ParlerのユーザーもSignalとTelegramに流れ込んで情報交換を続けている、と指摘されています。

「ただ、SignalもTelegramも僕がちょっとどうかな、と思うのは、あらかじめ電話番号を登録しなければならないところです。これはLINEも同様です。ただ、Telegramによると電話番号情報はプライバシーに配慮して外部に公開することはない、という触れ込みだったので少し前に僕も登録してみました。登録名も太田本人とわからないように適当なニックネームにして。ところが何年か前に知り合いだった人から突然、久しぶりです、とダイレクトメッセージが来たんですね。結局、電話番号情報が他の情報とサーバー側で関連づけられて処理されているのか、とTelegramに少し裏切られた気持ちになった記憶があります。それならば電話番号を登録しなくていいFacebookのほうがまだいいかな、と思うところもあります」(太田)

今回、2本のニュースを取り上げました。ユーザーとソーシャル・サービス提供者側の間に良好なトラスト(信頼)が成立するには、相互の不信感を取り除かなければなりません。サービス提供者側が一方的に押し付けるようなやり方ではユーザーも離れていきます。データの取り扱いに関する丁寧にわかりやすい説明と理解、対話を含めて、信頼を築こうとする両者の地道な取り組みの重要性があらためて問われそうです。