毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。
当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2021年4月1日
- タイトル:ニュースコメンタリー(ダークパターン規制 等)
- 発表者:データサイン プロダクトマネージャー 坂本一仁
国内の消費者向け主要100サイトの6割にダークパターン
2020年6月に配信したデータサイン・ランチタイムトークのレポートブログ「ダークパターンとは何か?」に多数のアクセスをいただきました。きっかけは2021年3月27日、日本経済新聞朝刊に掲載された記事でした(日経電子版では前日3月26日のイブニングスクープに配信)。どのような内容の記事だったのでしょうか。データサイン プロダクトマネージャー 坂本一仁がコメントしました。
日経新聞の記事タイトルは、消費者操る「ダークパターン」 国内サイト6割該当、というものでした。
「ダークパターンとは、Webサイトにアクセスするユーザーがサイト側にとって都合よい方に誘導され、自分に不利益な選択をしてしまうようなUX/UIデザインの総称です」(坂本)
記事によると、2021年1月、米アマゾン・ドット・コムの有料サービス「アマゾンプライム」について、政府系のノルウェー消費者評議会が「解約が困難で消費者の利益を損ねると指摘」したことで、ギリシャやフランス、ドイツ、米国の消費者団体もこの問題提起に賛同し、各国の当局に調査を働きかけたそうです。
「ダークパターンの種類については諸説あります。代表的なものはプリンストン大学が2019年に発表した論文や、darkpatterns.orgに記載されています。ネットサービスで退会などの解約を煩雑にする『妨害』(obstruction)や、セール時間や商品在庫数に限りがあることを強調して購入を急かす『あおり』など、実際に経験されたことがある方もいると思います」(坂本)
日本経済新聞が2020年12月、国内の消費者向け主要100サイトを調べたところ、ネット通販など62サイトでダークパターンが確認されたそうです。
海外ではダークパターンに対する法規制が強化されています。2020年9月には米連邦取引委員会(FTC)が通信教育サービスを提供する企業を提訴。また、2021年1月にはワシントン州でダークパターンによる同意取得を規制する法案が提出されました。さらに、カリフォルニア州は2021年3月、消費者プライバシー法(CCPA)にダークパターンを禁じる条項を加えました。
ダークパターンかどうかを判断する目安
ダークパターンへの規制を強化する海外の動きに対して、日本の対応はどうでしょうか。同記事によると昨今、国民生活センターには「キャンセルできない」などネット通販に関する相談が増えており、そのうちダークパターン絡みと見られる内容が多いことが指摘されています。
ただ、ダークパターンには、明らかに違法とは言えないグレーなケースが多く含まれます。
「ダークパターンかどうかを見分ける基準として私が目安に考えているのは次の2点です。(1)入会と退会、許可と拒否が同じタスク量でできるかどうか。入会は簡単だけど退会に時間をかけさせるような仕組みや、一括許可ボタンはあるのに一括拒否ボタンがない、というUIはユーザーからの信頼を損なうでしょう。また(2)事業者が有利なようにユーザーを強制していないかどうか。たとえば事業者が有利になる選択肢を明らかに目立たせたり、故意にユーザーの正確な判断の機会を奪ったりする手法になっていないか注意が必要です」(坂本)
普通にサイトを作っているとダークパターンになってしまいがち
サイトを公開している事業者側が、知らず知らずのうちにダークパターンを作っているケースがあります。
たとえば、ユーザーの口コミや情報の拡散を用いてプロダクトやサービスのファンを増やす「グロースハック」というマーケティングのフレームワークがありますが、ユーザーの獲得や収益にこだわるあまり、いつしかユーザーが不利益を被っていることに気づかなかった、というのでは本末転倒になってしまいます。
「まずは、ダークパターンの存在を知ることが大切です。そして、サイトの運営に関わるすべてのステークホルダーが注意すること。行き過ぎはないか、事業者の都合が良いように強制していないか、ユーザーが自由に選択できるようになっているか、ぜひチェックしてみてください」と坂本は述べました。
この日のランチタイムトークではほかに、データサインが実施した「データ共有100社調査」結果報告に関するお知らせと、2021年4月施行の改正個人情報保護法に関する政令・規則についての話題が出ました。
ランチタイムトークでは、ビジネスに役立つような気になる話題を引き続き、取り上げて参ります。発表者とのQ&Aコーナーもありますので、どうぞお楽しみに!