毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2023年3月30日
  • タイトル:Originator Profile
  • メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

標準化に向け研究開発中の技術

ブラウザに表示されるメディアや記事、広告が有害サイトやフェイクではなく、信頼できるメディアで良質なコンテンツであることを見分けられるでしょうか。難しいのが実情です。この課題を解決する技術として研究開発が進められている「Originator Profile」(OP)の概要をランチタイムトークで紹介しました。

Originator Profile(オリジネーター・プロファイル)とは、ネット上のニュース記事や広告などの情報コンテンツに、それらの発信者(オリジネーター)の実在性と信頼性を確認できる情報を紐づける技術です。オリジネーターには、コンテンツの作成者、配信サイト運営者、広告主などが該当します。

2022年12月に設立されたオリジネーター・プロファイル技術研究組合(理事長は村井純 慶応義塾大学教授)の公式サイトには次のように記されています。

Originator Profile 技術は現在、国内企業を中心とした実証実験を行っている段階ですが、そこで得たフィードバックを元に、更なる開発と社会実装を進め、Web 技術の標準化団体である W3C(World Wide Web Consortium) などにオープンソースの実装と共に仕様を提案します。

同組合には2023年3月時点で国内の新聞社など20社以上が参画し、その後も組合員は増えています。

データサイン提案のTrusted WebプロトタイプもOPを活用

「あるニュースサイトやその中で配信される記事や広告が信頼できるものかどうかの判断は、ユーザーである閲覧者に委ねられているのが現状です。つまり発信者がサイトに自ら記載する『信頼できるメディアの記事や広告ですよ』という情報をユーザーが仕方なく信じざるを得ない状況にあります。一方、信頼できる第三者が『このメディアの記事、広告は信頼できますよ』と認証し、付与するのがオリジネーター・プロファイルという証明書です」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)

オリジネーター・プロファイルは、令和3年度「Trusted Webの実現に向けたユースケース実証事業」においてデータサインが提案した「オンラインマーケティングにおけるパーソナルデータの流通」ユースケースのプロトタイプにも用いられています。

本プロトタイプでは、生活者(サイト閲覧者)、サイト運営者、アドテク事業者の三者が、それぞれ第三者によって認証済みのオリジネーター・プロファイルを開示し、相互にそれを検証することで、信頼に基づくオンラインマーケティングを実現するものです。

「サイト閲覧者は、インストールされたブラウザの拡張機能を用いて、サイトに置かれたJWT(JSON Web Token)という文字列にエンコードされたJSON形式のオリジネーター・プロファイルを読み取ります。それがしかるべき審査機関から発行された正当なものであること、つまりサイトが信頼できることが検証できれば、次にサイト閲覧者はBot(ボット)ではなく実在の人間であるという証明書と、広告識別子などを相手に渡します。それを受け取った相手先、サイト運営者や広告配信企業、アクセス解析企業も非Bot証明書を検証して『実在する人間がこのサイトを訪れている』ことを検証することで相互の信頼が成立します」(太田)

第三者認証するのは誰が適任なの?

本プロトタイプでは誰が審査を行う第三者認証機関になるか、を選択することができます。実際のところ、誰が第三者認証を行い、証明書であるオリジネーター・プロファイルを発行、付与する役割を果たすのが適任なのでしょうか。

「いくつか考えられますが、デジタル広告であれば、たとえば、企業、広告代理店、メディアなどが参画するJICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)が考えられます。前述のオリジネーター・プロファイル技術研究組合でも、ニュース記事の作成者を第三者認証する技術開発を進めているようです」(太田)

ウェブ上のトラストを向上させる技術の研究開発やコミュニティの活動が活発化しています。ランチタイムトークでも動向をウォッチしたいと思います。