毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2022年12月22日
- タイトル:Fortniteに対する制裁金
- 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
米連邦取引委員会からエピックゲームスに制裁
2022年12月20日付の日本経済新聞電子版に「ダークパターンに厳しい目 フォートナイト運営に制裁金」という記事が掲載されました。子どもたちに人気の対戦ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」を運営する米エピックゲームズに対し、 米連邦取引委員会(FTC)が、5億2000万ドル(約710億円)の制裁金を科すと発表しました。理由は何でしょうか。同記事内でコメントしたデータサイン 代表取締役社長 太田祐一が内容を補足しました。
Fortniteは、サードパーソンシューティングゲーム(TPS)に分類される対戦ゲームです。ユーザー数は世界で5億人以上。FTCの資料によるとその多くが子ども、またはその親だそうです。運営会社のエピックゲームスは米ノースカロライナに拠点がありますが、中国企業のテンセントが40%の株式を保有しています。
日本の公正取引委員会にあたるFTCが問題視したのは、米国のCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)に反して子どもの個人情報を保護者の同意を得ず収集していること、そして消費者を不利な決定に誘導する「ダークパターン」によって意図しない課金をユーザーに促す仕組みがFTC法に抵触していることです。
COPPA違反になった理由とは?
青少年の保護を目的とした米国のCOPPAでは、ウェブサイトやアプリなどオンラインサービスを利用する13歳未満の子どもに関する個人情報を収集する際には、保護者の同意を得ることを義務付けています。COPPAはもともと1998年に制定された法律で、FTCの要請によって成立されました。
「日本で開催されるFortniteの関連イベントには子どもたちもたくさん参加しています。もし開発元のエピックゲームス側が13歳未満を含む子どもが利用していることを認識していたのであれば、ユーザーの年齢を確認したり保護者の同意を取得したりするなどの対応を、早くからしておくべきだったのかな、と思います。そういえば、FTCからの制裁が発表された2022年12月19日の少し前、Fortniteの画面を見るとユーザーの年齢を確認する質問が表示されるようになっていて『おや』と思いました」(太田)
キャンセルしにくい仕様やUXはダークパターンと認定
FTCの資料には、Fortniteにおけるアイテム購入などの場面では事前の確認画面がなくゲーム内通貨が即座に引き落とされる場合があること、またユーザーを混乱させるような紛らわしい表示や操作性があることに対する苦情が複数記されています。
「たとえば、購入済みのアイテム(装備)の見映えをロッカー(ルーム)でプレビューするためのボタン操作と、ショップでアイテムを購入する際のボタン操作がまったく同じで紛らわしい、といったクレームがついています。あるユーザーがショップで『他のアイテムを試着してみたい』という意図から、ロッカーで使い慣れたプレビュー操作をした瞬間にゲーム内通貨が引き落とされてしまう、というトラブルです」(太田)
さらに、購入をキャンセルしたい際に操作する画面上の表示が、画面下に小さく表示される仕様に変更されてユーザーが気づきにくくなったことや、キャンセルのためにはボタンを長押しする(購入ではボタン長押しの必要はなかった)操作も、不満として指摘されています。
またゲーム内通貨を返金してもらいたくても、1アカウントにつきわずか3回までという制限があるなど、にユーザーがキャンセルしづらい手順や設計になっていることが、ダークパターンであるとFTCは判断しています。
ダークパターンとは事業者の利益を優先させるようにユーザーを意図的に誘導する表記やデザインの総称です。
FTCから複数の問題点を指摘されたエピックゲームスはその後、Fortniteの仕様を段階的に改善している模様です。
「うっかり購入のトラブルを減らすためか、購入には長押し(1秒ほど)が必要になりました。また、各種キャンセルが以前よりやりやすくなったようです」(太田)
COPPA違反およびダークパターンに関する問題で、今回FTCが科した制裁金は過去最高額と見られます。Fortniteの人気は衰え知らずですが、消費者とのよりよい関係を築いていくことが期待されます。