毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。
当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2022年3月10日
- タイトル:電気通信事業法改正案が閣議決定
- 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
法制化に向けた新たな動き
2022年3月4日に閣議決定された電気通信事業法改正案。気になった点をデータサイン 代表取締役社長 太田祐一がランチタイムトークの話題に取り上げました。
閣議決定に先立って、2022年1月14日に開催された第16回電気通信事業ガバナンス研究会では同検討会の報告書(案)が示されました。その報告書案に対するパブリックコメントが翌1月15日から2月4日まで募集され、48件の意見が寄せられました。それを受けてまとめられた報告書が2月18日に公表されています。
「今回はその報告書の中で広告タグや、SDK(ソフトウェア開発キット)などの情報収集モジュールによる情報の外部送信規律の部分に焦点を当てチェックしてみました」(太田)
外部送信とは、「利用者に関する情報の外部送信の際に講じるべき措置」に記された規律で、ユーザーのスマホやPC(電気通信設備)がアクセスした先がウェブサイトであればJavaScriptの広告タグなどを、アプリならばSDKをダウンロード・実行させて、ブラウザを識別するCookie情報やアプリに紐づくIDFAなど広告IDを外部のサーバーに送信させる(指令を出す)行為を意味します。
ニュース配信サイトは規律の対象外?
「外部送信規律の対象となる事業者は、当初の案では外部送信を行っているすべてのウェブサイトやアプリでしたが、報告書では『電気通信事業者』と『電気通信事業を営む者』(第三号事業を営む者)に限られました。報告書で明確になった点です」(太田)
新聞社などが運営するニュース配信サイトやネットメディアなどのパブリッシャーは対象となるのでしょうか。
パブコメへの回答を見ると、次の一文があります。
一般的に、ニュース配信サイトを運営する新聞社やネットメディアは、電気通信事業を営む者に該当するため、利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報の当該利用者以外の者への外部送信を指令するための通信を行う場合は本規律の対象となるものと考えます。
「この一文から対象に該当することが読み取れます。ただし大規模なSNSや検索サイトに比較して、利用者が少ないオウンドメディアや非営利の個人サイトなどは対象にならないのではないか、と個人的には予想しています。正確には今後の総務省令などで確認する必要があるでしょう」(太田)
通知・公表の内容がより明確に
外部送信規律の対象事業者が負う義務の内容は当初案で、同意またはオプトアウトとされていましたが、報告書では新たに「通知・公表」が追記されました。
改正案の第27条の12には、「当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信」を対象行為とする条文が記されています。
「この条文は、先述の報告書における外部送信規律に該当しますが、どのような情報をどこに送信する場合に対応すべきか、がより具体的に記されています。また、具体的な通知・公表内容についての言及があります」(太田)
なお、通知・公表義務における例外として、(1号)利用する際に送信をすることが必要なもの、(2号)自社の電気通信設備を送信先として送信されるもの、(3号)送信されることについて当該利用者が同意している情報、(4号)ユーザーの求めに応じて停止する措置を講じていることなど、が挙げられています。
「2号はファーストパーティーCookieに関する内容と思われます。3号、4号は曖昧な点が見受けられるので今後発表される総務省令でどこまで詳しく説明されるか注視したいところです」(太田)
電気通信事業法の改正に向けた動き。今後も気になる点をランチタイムトークで取り上げたいと思います。