毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。
当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2022年6月30日
- タイトル:プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関する WG とりまとめ(案)
- 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
「外部送信規律」の施行に向けた動き
電気通信事業法における「外部送信」とは、ウェブサイト運営事業者やアプリケーション提供事業者が利用者(ユーザー)に電気通信サービスを提供する際に、ユーザーの閲覧履歴などの情報を第三者のサーバーなどに送信することを意味します。この外部送信の指令を出すプログラム(サイトに埋め込むJavaScriptタグなど)の電気通信を送信する場合、ユーザーに確認の機会を付与することを求めるルールが「外部送信規律」です。こちらの論点をデータサイン 代表取締役社長 太田祐一が取り上げました。
外部送信規律の推進に向けた検討の背景にあるのは、2022年6月13日に成立した電気通信事業法改正法(令和4年法律第 70 号)です。同法施行は2023年4月以降の予定です。
太田も構成員の1人として参加する、総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」傘下の「プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ」(以下、プラ研利用者情報WG)の中でも、外部送信規律に関する議論が重ねられました。第17回(2022年6月27開催)の配布資料(P.69)には、外部送信規律について定めた、電気通信事業法第27条の12で検討が必要とされる5つの論点が挙げられています。これらは総務省令で定めることとされている事項に該当します。
「今後策定される総務省令やガイドラインでは、企業や団体が改正法を実務に適用していくために必要な、より具体的な取り組みの方向性が示される見通しです」(太田)
プラ研利用者情報WGの検討内容を反映
前出の配布資料(総務省令に関するとりまとめ案)に記された、外部送信規律に関する論点とは次の5つです。
- 内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の影響に及ぼす影響が少なくない電気通信役務
- 利用者に通知し又は容易に知り得る状態に置く際に満たすべき要件
- 利用者に通知し又は容易に知り得る状態に置くべき事項
- オプトアウト措置の際に利用者が容易に知り得る状態に置く事項
- 利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要な情報
プラ研利用者情報WGで議論されたのは、上記論点で明確にしておくべき点や総務省令に盛り込むべき内容です。
例えば、論点1に関連して電気通信役務の『利用者の範囲』として次のような記述がとりまとめ案(P.70)の中にあります。
利用者の利益に及ぼす影響が少ないと認められる利用状況がどのようなものであるか、内容、利用者の範囲、利用状況を勘案して今後適切に判断していく必要がある。この際、利用者の利益に及ぼす影響について、リスクベース、アウトカムベースで検討することが望ましいとの意見が多くあった。
「この文章には、利用者の利益の大小はサイトのアクセス数の多寡で判断するべきではない、というプラ研利用者情報WGの議論が反映されています。単にウェブサイトへのアクセス数の多いから利用者の利益に及ぼす影響が大きいとは言い切れません。希少疾患の治療に関するウェブサイトがあったとします。そのサイトのアクセス数は決して多くないかもしれませんが、訪問する利用者は治癒や快復を切実に望む患者や家族の可能性が考えられます。とりまとめ案ではその配慮がリスクベース、アウトカムベースで検討することが望ましいという意見として記載されています」(太田)
利用者情報の最新動向を今後もお届けします
この日のランチタイムトークでは、他の4つの論点に対してもプラ研利用者情報WGの議論を振り返りつつ太田が解説しました。
とりまとめ案やそれを踏まえた総務省令やガイドラインの案は今後、数回にわたるパブリックコメントを経ながら来年度の改正案施行に向けて内容が詰められます。
今回取り上げたプラ研利用者情報WGのとりまとめ案の内容は、2021年9月に発表された中間とりまとめのアップデート版です。外部送信規律以外にも、プラットフォームサービスに係る利用者情報の現状と課題、現行制度と政策、海外動向などを網羅しています。今後もデータサインでは、利用者情報を関連する法制の最新動向をランチタイムトークで取り上げる予定です。視聴者の皆さんからの質問もリアルタイムに受け付けますので、どうぞご覧ください!