毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2023年7月13日
- タイトル:Meta社が開始した新アプリThreads
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
ThreadsはX(旧Twitter)の対抗馬になる?
Meta社(以下、メタ)が開始したTwiiterライクなSNSアプリ「Threads」(スレッズ)。プライバシーテック界隈でも話題です。
Threadsは、ミニブログサービスであるマストドンやmisskeyなどで用いられるActivityPubに準拠したソーシャルメディアで、中央集権的な性格を帯びるX(旧Twitter)とは一線を画すサービスの1つとして登場しました。
上述のActivityPubとは、2018年にWeb技術の標準化団体W3Cによって勧告された仕様で、非中央集権型で連合したソーシャルネットワーク(Fediverse)を形成することができる通信プロトコルです。このプロトコルに基づいて接続されたサーバー同士は、投稿や通知などの情報を相互にやりとりすることができます。
「Threadsのユーザーは同じくActivityPubを用いるSNS、たとえばマストドンのユーザーのフィードを読んだり、フォローし合ったりできるのですが、一方で『マストドンなど既存ユーザーのプライバシーは守られるの?』という懸念が指摘されています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
Threadsからの外部送信はなし
そのThreadsについて、マストドンの開発者/創業者でCEOのEugen Rochko(オイゲン・ロホコ)氏は2023年7月5日に投稿した公式ブログ記事のなかで、既存ユーザーの多くが抱く主な懸念に回答しています。たとえば、
- マストドンは電子メールやIPアドレスのような個人データを、ユーザーのアカウントがホスティングされているサーバーの外部に流すことはない
- マストドンのアカウントからThreadsユーザーをフォローしたりメッセージを送信したりしても、Threads側ではユーザーが送信したメッセージ以外の個人情報を収集することはできない
といった内容です。
App Storeで提供されるThreadsアプリが公開するAppプライバシーをみると、連絡先や閲覧履歴、検索履歴、位置情報などすべての項目にチェックが入っています。
「全部入りのチェックですが、Threadsから外部へのデータ送信は現状ほぼ行っていない、また10億人を超えるまでマネタイズをしないことを、メタの共同創業者兼CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は表明しています。なお、(オイゲン氏のブログによると)ThreadsはEUにはサービスを提供しないとあります。欧州のGDPR(一般データ保護規則)を敬遠したと解釈することもできそうです」(太田)
この日のランチタイムトークでは、データサインのWebtru(ウェブトゥルー)でThreadsの外部送信状況を調べた結果もお伝えしました。
大規模プラットフォームの囲い込みに対する牽制効果は?
マストドンのオイゲン氏は、Metaが新しいソーシャル・メディア・プラットフォームにActivityPubを採用することと、Metaが10年前にメッセンジャー・サービスにXMPP(Extensible Messaging and Presence Protocol)を採用したことは比較されるべきことだ、と皮肉めいた指摘をしています。
かつてのメッセージングサービスは、FacebookユーザーもGoogle Talkユーザーも関係なく自由にチャットできたのですが、大規模プラットフォーマーによる囲い込みによりその自由は失われました。しかし、もしThreadsが(XMPPのように)ActivityPubから離脱しても、ActivityPubは変わらずマストドンをサポートするだろう、とオイゲン氏は述べています。
また、オイゲン氏はメタが非中央集権的なソーシャルウェブの1つとして、マストドンと同様のActivityPubを利用していることに注目し、次のような趣旨の結論を記しています。
大規模なプラットフォームがActivityPubを採用するという事実は、(中略)これらの大規模プラットフォームに閉じ込められている人々がより良いプロバイダーに乗り換えるための道筋をつけることになるので、大規模プラットフォームが搾取の少ない、よりよいサービスを提供する方向へと圧力をかけることを意味する。これは私たちの活動における明確な勝利であり、願わくばこれから起こる多くの勝利のうちのひとつであってほしい。
サービス開始まもなくユーザー数が一時、1億人を突破と騒がれたThreadsでしたがその後、機能不足やプライバシーへの配慮に対する不満などから大量の離脱が知るところとなりました。群雄割拠のSNSアプリの中で果たして一石を投じることができるでしょうか。