FLoC が Topics API に

FLoC が Topics API に

2022年5月27日

毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2022年1月27日
  • タイトル:FLoC が Topics API に
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

FLoC公開トライアルで浮き彫りになった課題

W3Cで仕様策定中のプライバシーサンドボックスの機能の1つ、「FLoC」(Federated Learning of Cohorts)が「Topics API」にリニューアルされました。どのような変更がなされたのでしょうか。Google ChromeエンジニアがGithubに記した内容などを手がかりにデータサイン 代表取締役社長 太田祐一がコメントしました。

「FLoCはもともと既存のサードパーティーCookieによるターゲティング広告を代替する仕組みとしてグーグルが提案した機能です。Federated Learning(連合学習)により、ブラウザでウェブコンテンツを閲覧するユーザーの行動履歴を広告配信システム側に渡すことなく、ブラウザをコホート(広告でいうところのセグメント)に分類し、個々のブラウザではなくコホートに対して広告表示ができる、というプライバシーに配慮した提案でした」(太田)

2021年、FLoCオリジントライアルと銘打った公開実験が実施されました。そのフィードバックを受けて改良された新バージョン(FLoC 2.0)が、Topics APIという位置づけです。

Google ChromeエンジニアがGithubに記した内容などに見られるように、FloCでは次のような課題が指摘されていました。

  • FLoC(Federated Learning of Cohorts)と名乗りつつ連合学習が使われていないのはおかしい
  • コホートが、ユーザーにとって機微なものになるかもしれない
  • フィンガープリントの材料になる
  • UXの観点でユーザーが行える制御がいまいち
  • 広告表示サイトが自動的に元データの対象になる

Topics APIとFLoCはどう違うの?

Topics APIのTopic(トピック)というのは何でしょう?

Topics APIでは、ユーザーが訪問するウェブサイトのホスト名のみに基づいて関心のあるTopicを選択することが推奨されています。たとえば、「tennis.example.com」にはテニスのTopicが含まれているのに対し、「example.com/tennis」にはより一般的なexample.comに関連するTopicのみが含まれる可能性があります。

こうしたTopicsの種類は「Arts & Entertainment」や「Autos & Vehicles」など現在約350種類あります。Arts & EntertainmentであればComics、Moviesなどさらに細かく分類されています。そしてそれぞれのTopicにTopics IDが割り振られています。

「Topics APIでは、毎週ブラウザのローカルな閲覧情報をもとに上位5つのTopicを算出し、そこにランダムに選ばれたTopicが1つ追加されます。これはサイトをまたいだトラッキングや過去のユーザー行動履歴の利用を防ぐプライバシー保護の仕様といえるでしょう。なお、対象サイトはTopics APIを利用するサイトに限られます」(太田)

Topics APIで広告が表示される大きな流れは次の通りです。ユーザーがウェブサイトにアクセスすると広告タグ(JavaScript)が実行され、ブラウザの保有するTopic IDが広告配信システムに送信されます。広告配信システム側は表示する広告を決定し、ユーザーが閲覧するウェブサイトに広告画像やリンクを表示します。

この流れはFLoCと似ていますが、前述したFLoCの課題はTopics APIによって解決される可能性があります。

「ユーザーが行う制御の例では、自分のブラウザに付与されたTopicが何であるかを確認し、それを削除できるなど管理の仕組みが実装されるようです」(太田)

アドテク事業者やサイト運営者の対応は?

Topics IDの種類は350程度ということですが粒度は粗いでしょうか?

「興味や関心のカテゴリーがあまりに細分化し過ぎると、複数の興味を持つユーザーが本人の気づかない状況で特定されるフィンガープリントの温床になるおそれもあります。一方、興味や関心の情報のみで性別や年代、年収などのデモグラフィック情報がないのは既存サードパーティーCookieを利用するアドテク事業者はファーストパーティーCookieを持つ事業者と比べて不利に見えます。なお、Topics APIを利用するウェブサイトが適切なTopicに分類されるようにサイトのメタタグに説明情報を追記しておくのも有効と思います」(太田)

Google Chromeのエンジニアは、Topics APIは参加者からなるエコシステムからのフィードバックと改良の繰り返しによって改善されると記しています。どのように変化していくのか。データサインでも引き続き、注目したいと思います。

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