- 配信日:2023年11月30日
- タイトル:Trusted Web ホワイトペーパー v3.0
- メインスピーカー:データサイン 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
「信頼の枠組み」を率先して構築する取り組み
Trusted Web推進協議会(座長:村井純 慶應義塾大学教授)が2023年11月24日、「Trusted Webホワイトペーパー ver.3.0」を発表しました。こちらの概要をランチタイムトークで紹介しました。
Trusted Webホワイトペーパーver.3.0は3つの本編「概要/コンセプト編」「ユースケース編」「実装編」と「実装ガイドライン」から構成されます。そのうちTrusted Webの定義、生成AIに関するトラスト確保、取り組みの道標となる推進ステップ(仮称)、再構築されたアーキテクチャーおよび階層構造に基づくガバナンスのあり方を主な話題に取り上げました。
「Trusted Web」の定義は「概要/コンセプト編」に次のように記されています。
Trusted Web は、特定のサービスに過度に依存せずに、個人・法人によるデータのコントロールを強化する仕組み、やり取りするデータや相手方を検証できる仕組み等の新たな信頼の枠組みを構築するイニシアティブである。
出典:Trusted Webホワイトペーパー ver.3.0概要(p.15)
「Trusted Webは構想ではなく“イニシアティブ”だと位置付けています。多様な主体によって新しい価値を創出したり、DXの前提となる事業者間連携を円滑化したりするため、積極的なイニシアティブを取るという意図が感じられます。またDFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)の具体化を視野に、国際連携の推進を掲げています」(太田)
多様なステークホルダーの理解と協力を得るために
Trusted Webの実現には多くの関係者の賛同や参画が欠かせません。企業では経営者層、事業部門、エンジニアなどを巻き込んで、全社的に取り組みのステップを理解、共有することが求められます。
2022年8月に公表したホワイトペーパーver.2.0以後、民間事業者などによるユースケースの具体化やプロトタイプの開発が進展しつつあります。その取り組みからのフィードバックを踏まえたver.3.0ではアーキテクチャーを再整理するとともに、ガバナンスのあり方として運営体制の例をいくつか提示しています。また、ビジネス上および実装上の知見を幅広く提供し、Trusted Webの考え方への賛同を得ながら取り組みの拡大を期待しています。
ver.3.0各パートの想定読者は、Trusted Webのエンドユーザー、組織の経営者層、マネジメント層、エンジニア等、大学等研究機関、政府等ですが、バックグラウンドや視点、関心に応じてどこを読むとよいかのガイドマップが示されています。
出典:Trusted Webホワイトペーパー ver.3.0概要(p.3)
設計や実装に役立つ実装ガイドラインは随時更新
Trusted Webの背景にあるのは、デジタル社会の基盤であるインターネットとウェブをめぐるさまざまな課題です。データの受け渡しのプロトコルは決められているものの、アイデンティティ管理も含め、データマネジメントの多くはプラットフォーム事業者などの各サービスに依存、サイロ化している現状があります。
「外部からの検証可能性が低く”信じるほかない”状況のなかで、フェイクニュースや生成AIによる偽情報や誤情報などが流れるデータの信頼性への懸念、プライバシー侵害リスクなどの課題が生じています」(太田)
出典:Trusted Webホワイトペーパー ver.3.0概要(p.8)
実装ガイドラインの作成には弊社データサイン 代表取締役社長の太田祐一も携わっています。Trust Webは既存のインターネットのウェブというインフラの上に新たなトラストの枠組みを付加することを目指しています。実装ガイドラインはTrusted Webの目指すべき方向性に即した設計や実装におけるプラクティスとして活用できます。Trusted Webホワイトペーパーはおおむね年1回の頻度で改訂される見通しですが、実装ガイドラインはGithubに公開されており、実装編と呼応しながら随時内容が更新される予定です。