毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2022年5月26日
  • タイトル:データクリーンルームとは
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

プラットフォーマーを中心に各社がこぞって提供開始

クリーンルームといえば空気清浄度が管理される防塵室のこと。半導体製造工場や製薬会社、食品産業などでは欠かせません。一方、「データクリーンルーム」というジャンルのソリューションをご存知でしょうか。グーグルが提供する「Ads Data Hub」をはじめ、国内でも電通グループが2018年より取り組みを開始。同グループではフェイスブックから先行的にライセンスの提供を受け、データクリーンルームの技術を活用したソリューションを開発しているそうです。どういうものでしょうか。データサイン 代表取締役社長 太田祐一が解説しました。

データクリーンルームの定義は各社各様ですが、総務省 プラットフォームサービスに関する研究会の「プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ」にて、2022年4月27日付で開示された資料には、

「個人情報を保有するサービス利用者(広告主等)とサービスを提供するサービス提供者(プラットフォーム等)が双方のデータを突合して、広告施策を実施するサービス」と記されています。

Google Ads Data Hubの場合、広告主はCRM (顧客データ) などの自社データや第三者データをAds Data Hubにインポートし、Google 広告データと統合することが可能です。プライバシー保護の観点から、Ads Data Hub から得られるのはBigQuery を使って作成されたレポート結果です。広告の配信や効果測定に利用されます。

「あなた(広告主側)の持っているデータ(ファーストパーティーCookieやメールアドレス)をいただければ、こちら(データクリーンルーム提供者側)で突合・分析して、プライバシーに配慮した形で、その結果を統計情報として教えてあげますよ、というイメージです」(太田)

外部事業者に対する個人データの第三者提供?

データクリーンルームのサービス内容を法律的な観点で捉えるとどうなるでしょう。グレーな部分もありそうです。

個人情報保護委員会が公開する個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A(令和4年5月26日)の中に、Q7-41「委託に伴って提供された個人データを、委託先が独自に取得した個人データ又は個人関連情報と本人ごとに突合することはできますか」という質問があります。この問いに対する回答(一部抜粋)は次のとおりです。

「①外部事業者に対する個人データの第三者提供と整理した上で、原則本人の同意を得て提供し、提供先である当該外部事業者の利用目的の範囲内で取り扱うか、②外部事業者に対する委託と整理した上で、委託先である当該外部事業者において本人の同意を取得する等の対応を行う必要があります。(令和3年9月追加)」と記されています。

「広告主からデータクリーンルームを提供するプラットフォーマーなどへのメールアドレスの委託ではなく第三者提供と考えると、広告主側で原則本人同意が必要で、当該外部事業者の利用目的の範囲内で取り扱う必要があります。委託と捉えればグーグルなどが本人同意を取得する必要があります。データクリーンルームの位置付けや利用にあたってサービス利用者はこれらを十分確認しておいたほうがよいでしょう」(太田)

データサインが考えるデータクリーンルームとは

そもそもデータクリーンルームは、誰にとって”クリーン”なのでしょうか。

取得した個人データを預けることでビジネスに役立つレポートを得られる広告主側でしょうか。自社の保有する膨大な個人データを有効活用できるプラットフォーマーでしょうか。

「データクリーンルームを論じる中で、ユーザー個人はどうなっているのか気になります。ユーザー個人側でデータをコントロールできるインターフェースなどを用意しているデータクリーンルームは、少ないのが現状です。少なくともグーグルやフェイスブックは個人の権利を行使できるシステムを提供していますが、他のプラットフォーマーにおいても個人に対するコントロール権の付与を伴った形で、データクリーンルームを提供してほしいと思います」(太田)