毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。

当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2021年6月17日
  • タイトル:WWDC2021で発表されたプライバシー保護関連の技術
  • 発表者:データサイン 代表取締役社長 太田祐一

フィンガープリンティングを防止するPrivate Relay

米国時間の2021年6月7日から11日にかけてオンライン開催されたアップルのWWDC2021(世界開発者会議)。そちらでユーザーのプライバシーを保護するiOSやmacOSの新機能、セキュリティ関連の技術が数多く発表されました。その中から気になる話題をいくつかデータサイン代表取締役社長 太田祐一がピックアップました。

アップルはiCloudをアップデートした「iCloud+」というサービスを発表しました。そのうち太田が着目したのが、「Private Relay」(プライベートリレー)です。

Private Relayは、フィンガープリンティングを無効化することで、サイトを訪れたユーザーのトラッキングを防ぐことができる機能です。「ユーザー自身のIPアドレス」および、どのサイトにアクセスしたかという履歴を含む「接続先情報」の2つを暗号化する仕組みです。

「IPアドレスを暗号化する役割を持つイングレスプロキシー(ingress proxy)と、接続先情報を暗号化するイーグレスプロキシー(egress proxy)は、別々の異なる主体によって運営される点が注目されます。フィンガープリンティングなどに利用される2種類の情報を、(アップル自体を含む)特定の主体が同時に入手することができない仕組みであるとアップルは発表しています」(太田)

「アップルが公式に提供するダークウェブではないか」という捉え方もあるPrivate Relayはいよいよ、iOS 15とmacOS 12のSafariブラウザやアプリなどから利用可能になる見通しです。

メールアドレスを利用したトラッキングも防止

もう1つ太田が注目する機能が、「Hide My Email」(ハイドマイEメール)です。あるサービスに会員登録する際に、自分の本当のメールアドレスを開示しなくても登録できる、という機能を提供します。

「もともとiOS 13で『Sign in with Apple』という名称で提供されていた機能があります。Hide My Emailはそちらをより汎用的に利用できるようにしたもので、メールアプリで送信する際に、送信元のメールアドレスとしてランダムに作られるアカウント名を指定できたり、Safariで閲覧中のサイトからメールアドレスの入力を要求された際に別のメールアドレスを自動生成・入力したりすることが可能です」(太田)

実装されるのはiOS 15以降のバージョンから。2021年秋ごろになるのではないか、と見られます。

なお、データサインが提供する個人向けパーソナルデータ管理サービス「paspit」(パスピット)はすでに、メールアドレスやクレジットカード番号、電話番号、住所、Cookie IDをトークン化する特許取得済みの技術を実装・運用しています。提供先ごとにトークンは変更されるため、万一提供先からトークンが情報漏洩や不正利用されたとしても、当該トークンを無効化すればよく、実際のメールアドレスやカード番号などは拡散しません。今後さらにバージョンアップされた機能が搭載される予定ですのでご期待ください。

プライバシー保護を全面に押し出すアップル

WWDC 2021ではほかにも、自分が使うアプリがどのような情報にアクセスしたか、またはSDKを含めたアプリがどのドメインにアクセスしたか、などを確かめられる「App Privacy Report」(アッププライバシーレポート)などが発表されました。

これらの新しいサービスや機能について太田は「プライバシー保護対策に対して、いよいよアップルが本腰を入れてきたな、という印象です」と指摘しました。

デジタル広告ネットワークに影響を及ぼすアップルの新たな施策。ユーザーから好意的に受け入れられるでしょうか。ライバルのプラットフォーム事業者やアドテク事業者の反応も注目されます。