毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2025年3月6日
- タイトル:「個人情報保護法3年ごと見直し」検討の最新状況
- スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
検討すべき制度的な論点を整理
2025年3月5日に開催された第316回個人情報保護委員会では、「個人情報保護法の制度的課題に対する考え方(案)について」が議題に上りました。これに関連して配布された同名の資料1-1を眺めつつ、気になる点をランチタイムトークで取り上げました。
個人情報保護委員会は2023年11月より、個人情報保護法(令和2年改正法)におけるいわゆる3年ごと見直し検討を開始し、意見募集(パブリックコメント)をはじめ、有識者、産業界、消費者団体へのヒアリングなどを通じて、多様なステークホルダーの意見や指摘を整理しています。
2025年1月22日の第312回個人情報保護委員会では、一般法としての令和2年改正法における基本的な在り方の観点から検討すべき「制度的な論点」を再整理しました。それらを一枚にまとめた図が、第316回個人情報保護委員会の配布資料1-2です(下図)。

規制のあるべき姿を模索
「制度的な論点」とは上図に示された3項目、
- 個人データ等の取扱いにおける本人関与に係る規律の在り方
- 個人データ等の取扱いの態様の多様化等に伴うリスクに適切に対応した規律の在り方
- 個人情報取扱事業者等による規律遵守の実効性を確保するための規律の在り方
のことです。資料1-1には論点全体の考え方や、各論点について想定される具体的な規律の方向性に関する考え方が整理されています。
ただし、資料はあくまで論点を「整理」したものです。パブコメやヒアリング、委員会での議論などで得られた意見や指摘、提案において関係者の関心が高い内容、合意形成が必要とされる内容、いまだにステークホルダーの間で落とし所が見えていない事項が含まれており、結論がズバリ記されているわけではありません。
たとえば、統計作成等であると整理できるAI(人工知能)開発を含む統計情報等の作成のために複数の事業者が持つデータを共有し、横断的に解析する際の「規律の考え方」では、一定の条件のもとに「本人同意なき個人データ等の第三者提供及び公開されている要配慮個人情報の取得を可能としてはどうか」と問いかける文体で論点が記されています。
駆け引きは直前まで続くの?
2025年11月7日配信のランチタイムトークで取り上げた「第4回 個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会」(2024年10月11日開催)における白熱した意見交換のように、たとえば課徴金制度の導入の要否をめぐって産業界側と消費者側の間には溝があります。個人の権利利益のより実質的な保護および、実効性のある監視・監督、データの利活用に向けた取り組みへの支援の狭間で、バランスをどこに取るかが論点になっています。
資料1-1では、同制度の導入の要否及び制度設計の在り方については、(2024年12 月末に議論の状況を整理した)報告書の内容を踏まえ、「継続して議論していく必要があるのではないか」と問いかけ、報告書において提示した制度設計の案及び論点の詳細は別紙に記載しています。
別紙には、仮に課徴金制度を導入するとした場合においても、適正なデータ利活用に悪影響を与えるおそれがないように、課徴金納付命令の対象範囲や算定方法を念頭においた制度設計を行う必要性などが記されています。
(この日のランチタイムトーク時点で)法改正までのタイムリミットが迫りつつありますが、資料1-1の1ページには「今後、本文書の内容も踏まえつつ、ステークホルダーとの議論を続けていくこととする」とあります。議論の行方が気になります。