毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2025年3月13日
- タイトル:デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス(素案)
- スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
デジタル広告の配信で留意すべきリスク
この日のランチタイムトークで取り上げた話題は、総務省が発表した「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス(素案)」でした。この指針は、広告主がデジタル広告の配信や流通におけるリスクを認識し、自らが望む媒体(メディア)に広告を配信するための考え方や対策を記しています。
本資料は、2025年3月3日にオンラインで開催された「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ(第7回)」で共有されました。
資料で挙げられている広告主等が考慮すべきリスクには主に、ブランドセーフティに関するリスク(ブランドの毀損)、アドフラウドにより広告費が流出するリスク(無効トラフィック:Invalid Traffic、略してIVT)、そしてデジタル社会の不健全なエコシステムに加担するリスクです。
発覚すると企業イメージの悪化や顧客の離反に
例示されたリスク対策では、企業の広告担当者だけでなく経営層が関与することの必要性が述べられています。
たとえば、ブランドセーフティに関するリスクにおいて、広告主が意図しない不適正な媒体に広告が掲載された場合、利用者からの苦情や SNS などでの拡散を通じて、広告主のブランドを毀損するおそれがあります。この結果、利用者の購買意欲が失われ、中長期的な収益の減少につながる可能性が考えられます。
また、アドフラウドにより広告費が流出するリスクとは、自動実行されるプログラムを組み込んだbot(ボット)を利用したり、スパムコンテンツを大量に生成したりすることで、本来カウントするべきではないインプレッション(広告表示)やクリックのカウント回数などの無効なトラフィックを不正に発生させ、広告費を詐取する行為を意味します。アドフラウドは広告費の流出や広告効果の低下を招きます。
本資料には、日本における2022 年上半期におけるアドフラウド発生率は、デスクトップ/モバイルウェブともに世界20カ国中ワースト2位(3.3%/1.7%)の高さで、世界の平均(1.3%/0.5%)を大きく上回っている、つまりアドフラウの標的になっていることが問題視されています。
そして、不健全なエコシステムへの加担とは、違法ダウンロードサイトなどの収益源に自社の広告費が知らないうちに悪用されているリスクです。
「偽・誤情報の拡散や違法アップロードなどを容認している企業とみなされ、イメージの悪化やコンプライアンス違反、企業としての社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)を果たせない懸念があります。これらのリスク対策や改善は組織全体で継続的に取り組む必要があり、特定の部門ではなく経営層の関与が不可欠です」(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一)
広告主側の主体的、継続的な取り組みが不可欠
デジタル広告において大きな市場シェアを有するのは、リアルタイムに広告枠が取引される運用型広告です。ところが、4マス媒体(テレビ、新聞、雑誌・書籍、ラジオ)と比べて流通経路が複雑であり、悪意がある主体が紛れ込んでも気づきにくい、掲載先となり得る媒体が無数に存在するためどこに広告が出ているのかを把握しにくいなどの課題が存在します。
広告を配信するプラットフォーマーや広告取扱事業者への規制強化も議論されていますが、残念ながら一網打尽となる有効な解決策は見当たらないのが現状で、広告主側が主体的にマネジメントする認識が求められています。
「基本的なリスクを理解したうえで組織体制の整備や対策の検討、方針策定、広告配信における契約内容のチェック、配信後のモニタリングなどの取り組みを進めます。ツールや専門機関の知見も組み合わせると効果的でしょう。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、取り組みの継続がリスクの回避や低減への近道です」(太田)
本資料は素案ですが、デジタル広告配信における基本的なリスクや対策の考え方が記されています。こちらを参考に組織の取り組み状況を再度チェックしてみるとよいでしょう。