毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。

  • 配信日:2025年5月15日
  • タイトル:インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業(令和7年度)
  • スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
  • MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史

AIによってさらに精緻化する偽・誤情報 

総務省では令和6年度(2024年度)に実施した「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」を2025年度も継続しています。 

背景にあるのは、情報の収集や閲覧に欠かせないプラットフォームサービスなどのインターネット上で、偽(にせ)・誤(ご)情報が流通・拡散し、差別や偏見の助長、詐欺などの犯罪を誘発している状況です。2024年中のSNS型投資詐欺の被害額は約800億円に達しています。また、SNSを利用した情報発信と収集が活発化する災害時や選挙において、AIを利用した画像、映像、音声などを組み合わせた巧妙な偽・誤情報が流通・拡散する影響が懸念されます。 

事実が歪められたり真偽を適切に判断したりすることが困難になれば、デジタルサービスを安心・信頼して利用することはできません。 

こうした状況を踏まえ、総務省では、インターネット上の偽・誤情報への対策技術の開発・実証の実施を希望する団体を一般に公募しました。2025年度の公募は4月22日から5月26日にかけて実施されました。 

審査対象とする公募の内容が拡充 

公募された内容は次の通りです。 

【技術開発区分】 

  1. コンテンツの真偽判別支援技術 
  2. 真正性保証・信頼性判断支援・改ざん検知技術 
  3. 情報流通状況の可視化・分析技術 
  4. 偽・誤情報の拡散を防止する技術 
  5. 偽・誤情報を無効化する技術 

【研究・調査区分】 

1. 偽・誤情報対策技術に係る研究 

  • SNS 上での偽・誤情報の拡散メカニズムに関する定量的・心理学的な分析 
  • 偽・誤情報の拡散防止や訂正の方法等に関する定量的・心理学的分析 
  • 偽・誤情報対策技術の効果測定に関する定量的・心理学的分析 等 

「2024年度における実証事業との大きな違いは、対象とする公募の内容が拡充されたことです。昨年度は『ディープフェイク対策技術の開発・実証』と『発信者情報の実在性・信頼性確保技術の導入促進』という2つの枠組みでした。今年度は技術開発区分が詳細になり、さらに研究・調査区分が追加されています」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一) 

情報の信頼性評価プラットフォームを開発中 

昨年度(2024年度)にはデータサインが提案する「個人の署名によるコンテンツの真偽表明データベース」が採択事業の1つに選ばれました。「発信者情報の実在性・信頼性確保技術の導入促進」に関わる提案です。著名人の氏名や写真を悪用した偽のSNS広告やウェブ記事に釣られた投資詐欺などの多発を受け、正しい情報コンテンツに適切な発信者情報を付与し、発信者と受信者を偽・誤情報から守るねらいです。 

さらに、この提案をもとに「Boolcheck」(ブールチェック)という情報の信頼性評価プラットフォームを開発しています。株式会社カブ&ピース代表取締役社長 前澤友作氏をはじめとする著名人や、複数の主要メディアのジャーナリストの方々による実証実験も開始しました。 

そして、フィードバックに基づいて、より多くの方に利用してもらえるようにシステムの改善と機能の拡充を進めています。 

たとえば、各プラットフォーム事業者がシステムに組み込めるようにすることで、広告やアカウントの審査などへの活用が可能になる見通しです。プラットフォーム事業者間で相互にBoolcheckの情報を参照すると、それぞれのファクトチェックにおけるコストの削減や人員不足の課題への対処が期待できます。デジタルサービスを利用するユーザーの安心感も増すでしょう。今後の進展にぜひご注目ください。