毎週木曜日に配信している「データサイン・ランチタイムトーク」の模様をレポートします。当記事で取り上げるのは以下の配信です。
- 配信日:2024年10月17日
- タイトル:SPI(スマートフォンプライバシーイニシアティブ)の改定
- スピーカー:DataSign(データサイン) 代表取締役社長 太田祐一
- MC:ビジネスディベロッパー 宮崎洋史
法改正に影響を与えうるベストプラクティス
総務省は、「ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会」(座長:宍戸常寿 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授)で取りまとめられた次の2つの報告書(案)についてパブリックコメントを募集しています(意見募集期間は2024年10月10日から11月8日まで)。
1つは「利用者情報に関するワーキンググループ報告書(案)」、もうひとつは「不適正利用対策に関するワーキンググループ報告書(案)」です。
前者の「利用者情報に関するワーキンググループ報告書(案)」の中には別添で「スマートフォン プライバシー セキュリティ イニシアティブ」の改定案・抜粋が含まれています。
この改定の背景には2012年に公表された「スマートフォン プライバシー イニシアティブ」(略してSPI)という、スマートフォンのアプリ提供者にプライバシーポリシーの作成を推奨する取り組みがあります。プライバシーポリシーには、外部送信または蓄積を伴う形で取得した利用者情報をどのように取り扱うか、という指針が示されます。
「SPIは利用者が安心安全にアプリを利用できる環境を確保することが目的ですが、最新版(スマートフォン プライバシー イニシアティブIII)が2017年に公表されて以来、更新はありません。しかしSPIのコンセプトは2023年6月に施行された令和4年改正電気通信事業法の外部送信規律のベースになっています。SPIは法的拘束力を有するものではないですが、法令から一歩進んだベストプラクティスとして、今後の外部送信規律の改定などに影響を及ぼす可能性があり、ランチタイムトークの話題に取り上げました」(データサイン 代表取締役社長 太田祐一)
気になるウェブサイトにおける対応との整合性
本ランチタイムトークではSPIの改定案について、総務省「利用者情報に関するワーキンググループ(第12回)」(令和6年9月30日開催)で配布された「参考資料12-1 スマートフォン プライバシー イニシアティブIIIからの改定内容」の新旧対照表を参考にしました。
まず、SPIの名称ですが今後は「スマートフォン プライバシー セキュリティ イニシアティブ」に改定される見通しです。「セキュリティ」という言葉が挿入されている理由には、令和2年改正個人情報保護法関連の追記など、セキュリティの確保に係る取り組みの反映が挙げられます。
また、「1.1. 総則」には本指針の目的が記されています。
指針はスマートフォン上のアプリケーションについて関係事業者が取り組むことが望ましい事項を定めたものです。その脚注に「ウェブサイトにおいて同様の利用者情報の取扱いが生じる場合があり、その関係事業者は本指針に定める事項を参考に対応を図ることが考えられる」という一文が追記されています。
「ウェブサイトに係る外部送信を原則オプトインとする諸外国の立法例もある現状において、通知・公表がベストプラクティスではないとしてしまうことに違和感がある、という有識者の意見があります。私もウェブサイトをSPIの対象に含めることを本文に明記すべきだと考えていますが、皆さんはいかがでしょう」(太田)
今日の諸課題を反映する新たな提案は要チェック
改定案では「具体的な取組内容」として「1.2.1.1 プライバシーポリシーの作成」に10項目を挙げています。その②には「利用者情報の取扱いは、その利用目的との関係において適切で関連性があり、かつ、必要最小限の範囲とすることが望ましい」とする、いわゆるデータミニマイゼーション(Data Minimization:データの最小化)の原則が追記されています。
「また、⑤のなかの[情報収集モジュール等に関する記載事項]では、『情報収集モジュール提供者による情報利用の有無(ある場合はその目的)』という一文が追記されています。外部送信規律における利用目的について、送信元での利用目的なのか、送信先での利用目的なのか曖昧になりがちなので明確にしましょうという意図が読み取れます」(太田)
さらに改定案には利用者利益の保護を図る観点から「1.2.1.6. ダークパターン回避の対応」が追記されています。その脚注には「本指針においては、あくまで望ましい事項として記載しているが、関係する他法令においてこのような取扱いが禁止されている場合には、当該法令に従い対応する必要がある」と付記されています。
法制度化の行方を占う改定案へのパブコメ。皆さんもぜひチェックしてみてください。